【ロサンゼルス14日(日本時間15日)=塩畑大輔】石川遼(19=パナソニック)が伝家の宝刀「ケン・ワタナベ」で、米ツアー初制覇への道を切り開く。17日開幕のノーザントラストオープン出場へ向け、会場のリビエラCCで初の練習ラウンドを行った。プロアマ戦に出場していた俳優渡辺謙(51)と「ニアミス」。愛用の0番アイアンに名前を借りるあこがれの人物との初対面は、惜しくもお預けになったが、人づてに激励の言葉は受け取った。「ラストサムライ」でのアカデミー助演男優賞ノミネートなど、世界で活躍する先輩にあやかり、世界の頂点への足がかりをつくる。

 どうしても会いたい人だった。リビエラCCでの練習ラウンド終了後。報道陣から「渡辺謙さんがプロアマ戦出場でここに来ていた」と聞かされた石川は「ホントですか?

 うわー、会いたかったなあ」と天を仰いだ。ただのミーハー心からではない。その証拠に「実は僕の0番アイアン、ケン・ワタナベと名付けているんです」と明かした。

 風の影響を受けない低弾道で250ヤード超を稼ぐ「0番アイアン」は、世界での戦いをにらんで、昨年7月の全英オープン直前から使っている。直後にテレビ番組で一緒になったタレント関根勤から「渡辺謙さんのように、世界で通用する武器だという意味で」ケン・ワタナベと名付けてもらったという。

 渡辺謙は「ラストサムライ」「インセプション」など米国映画界で活躍する世界的俳優。石川にとって、こだわりの愛器に名前をつけるくらい、あこがれの存在だ。ぜひ聞きたかった世界と渡り合う心得は、人づてに聞くことができた。渡辺さんは「米ツアーも3年目で、勝手の違いは感じていると思うけど、食事や生活など、すべてに適応しないと成功できない」と自らの経験から言葉を贈った。

 その上で「もう上位を目指せる力は蓄えていると思う。リラックスして、ガンガン力を出してほしい」とエール。聞いた石川は「今日ラウンドした感じだと、試合でも使うことになると思います」と「ケン・ワタナベ」をキャディーバッグに加えて、米ツアー今季初戦を戦うことを決断した。

 「米ツアーに来ると、日本人の代表として見られる。責任は重大です」と石川。この日は池田勇太とともに、当初の9ホールの予定を延長して14ホールを回り、コースの様子を確認した。「今シーズン初戦なんで、初日さえうまく回れれば肩の荷が下りると思う」と少しだけ重圧に揺れる胸中も吐露。その分、最後は日も傾き、係員にグリーンのピンを片付けられてしまうほどの「居残り練習」で、入念に準備をした。

 くしくも石川は渡辺謙が生まれた新潟県南部、魚沼地方でスキー合宿を張り、体力強化し米ツアーに備えてきた。日本人としての誇りを懸命に背負う姿も、映画「ラストサムライ」で渡辺謙が演じた「勝元」に重なる。風をも切り裂く「ケン・ワタナベ」を携えて、サムライ石川がゴルフ大国、米国の列強に切り込む。