賞金女王イ・ボミ(27=韓国)が、また国内ツアーの歴史を塗り替えた。単独トップから3バーディー、ノーボギーの69で回り、通算16アンダー、272で2週連続となる今季7勝目。今季獲得賞金は2億2581万7057円となり、01年伊沢利光を上回る国内最高額となった。来季は軸足を日本に置きつつ、海外メジャーや韓国ツアーへの参戦を予定。夢のリオデジャネイロ五輪出場も諦めてはいない。

 優勝インタビューでイ・ボミの瞳が潤んでいた。「信じられないです。人生でこんな1年は、もうないと思いますよ。(伊沢超えは)プレゼントみたい」。前人未到の領域に足を踏み入れ、興奮を隠せなかった。

 4日間、4つのパー5で1度も2オンを狙わなかった。リスク回避し、ロングホールで8バーディー、ノーボギー。この日の17番パー4では第2打がグリーンに乗らず、右手前のラフへ。直前に清水キャディーと話していた。「ボギーを打たないためには、どうしたら?」「ピンは狙っちゃダメ。グリーンの中央もダメ。手前も左はダメ。右ならいいよ」「ハイ!」。打ち合わせ通りに攻め、第3打でチップインバーディー。ツアー通算31勝目となった清水氏を「普通のことを当たり前にできる。時に予想を上回ってくる。キャディーやってて楽しいです」と驚かせた。

 今週、昨年亡くなった父ソクジュさんが夢に出てきたという。「『ボミの優勝が見たい』って。去年、お父さんが亡くなってから成績が良くなかったのを気にしていたんだと思います」。賞金女王という最後の約束を果たしても、父との絆が勝利への執念を生む。

 来季はハードスケジュールの合間を縫って「韓国でも2試合くらい出たい」と母国への恩返しを企画している。日米韓をまたにかけつつ、リオ五輪を狙う。選手層の厚い韓国でランク8番手だが、わずかな望みを捨てていない。12歳の時、友人に誘われたテコンドーを母に反対されて始めたゴルフ。最初は結果が出ず、両親に頭を下げて続けさせもらったゴルフ。日本で1番になった。【亀山泰宏】