プレーバック日刊スポーツ! 過去の12月7日付紙面を振り返ります。2009年の1面(東京版)は石川遼18歳で賞金王でした。

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<男子ゴルフ:日本シリーズJT杯>◇最終日◇2009年12月6日◇東京よみうりCC(7016ヤード、パー70)◇賞金総額1億3000万円(優勝4000万円)

 18歳の世界最年少賞金王が誕生した。石川遼(パナソニック)が66とスコアを伸ばし、通算3オーバーの283で19位で大会を終えた。今季獲得賞金額を1億8352万4051円とし、尾崎将司の日本ツアー最年少記録の26歳を36年ぶりに更新、世界主要6大ツアーを含めても最年少の快挙だった。4月のマスターズで予選落ちした悔しさをバネに戦い続けたという石川は、賞金王獲得で出場権を得た来年のマスターズでのリベンジを宣言。オフもテレビ出演などを最小限に抑えて、トレーニングを最優先し、日本の遼から世界のRyoへ飛躍する。

 18番グリーンに地鳴りが起きた。石川が10センチのパーパットを沈めた瞬間、幾重にも囲んだギャラリーから「おめでとう!」の大歓声と拍手が沸き起こった。せきを切ったように祝福の洪水が18歳の賞金王をのみ込んだ。石川は思わず表情を引き締めた。初めて成し遂げた偉業の重さが、全身を襲ってきた。

 石川 感無量です。不思議な気持ち。込み上げてくるものというのは、こういうことなのかな。実感があって、重みを感じる。

 初日に78と崩れ最下位スタートだったが、最後は66の好スコアで終えた。76年の欧州ツアーでバレステロスが打ち立てた19歳6カ月を抜き、世界のゴルフ史上初めて18歳で賞金王を獲得した。尊敬するあのウッズでさえ成し遂げられなかった快挙。ギャラリーの歓声に、赤いハンチング帽を取って、頭を下げた。

 初めて賞金王を意識したのは小学4年。歴代賞金王の片山、谷口徹、伊沢などが登場する漫画を自作した。「18番に来た時に2打負けてるんですが、僕がバーディー、相手がダボ(ダブルボギー)で優勝するんです。優勝する想像はしていましたが(18歳での達成は)漫画も超えてしまいましたね」とほほ笑んだ。

 4月のマスターズの予選落ちが、最大の発奮材料になった。予選通過ラインまであと1アンダーだった2日目の16番パー3。第1打でピンを果敢に攻めた結果、バンカーへ。そこからピンを15メートルオーバーするミスでダブルボギーをたたき終戦した。

 石川 ものすごく悔しくて。直後に「この悔しさが続く限り、自分に厳しく練習する」と自分に言った。それは今週まで続いた。その悔しさが1年間を支えてくれた。一時も忘れたことはなかった。

 マスターズ翌週のツアー開幕戦・東建ホームメイト杯では、試合後にバンカーの居残り特訓を続けた。その後も練習を続けたことで、サンドセーブ率は昨年の44・35%(55位)から57・03%(10位)と急上昇した。米ツアーで通用するように、ドライバーの飛距離を伸ばすため、スイングの改造も続けた。6月の日本プロではフックに悩まされて予選落ちしたが、目先の結果にとらわれずに方針を変更しなかった。

 賞金王を獲得した瞬間から目標をマスターズでのリベンジに切り替えた。父勝美氏は「来季が今日始まりました。マスターズで予選通過しなかったら、全米オープン、全米プロはでない」。石川も「あの16番をもう1度打ちにいく」。オフを返上して体づくりから取り組む。NHK紅白歌合戦出場も辞退、バラエティー番組にも出ない。今したいことを聞かれ、石川は「トレーニング」と即答した。

 万全の準備で来年2月ノーザントラストオープンから米ツアーに参戦し、マスターズに備える。「去年のオフよりも気合を入れて体力強化しないと。来年は今年以上の努力を絶対にする」。来年のさらなる栄光へ、18歳は歩みを止めない。

 ◆石川の来季の海外競技出場権 日本の賞金王となったことで、マスターズ、全米&全英両オープン出場権は確実、全米プロも慣例で招待が濃厚で、4大メジャー全試合で出場権を確定的にした。米ツアーからの推薦出場も増えることは確実。また11月29日時点で世界ランクは29位。世界選手権シリーズのアクセンチュアマッチプレーは「同64位以内」CA選手権なども「同50位以内」が出場資格の1つとなっており、出場権獲得が濃厚だ。

※記録と表記は当時のもの