松山英樹(25=LEXUS)が5バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの70で回り、通算2オーバーの146で首位と6打差の16位につけて決勝ラウンドに進んだ。終盤の苦手ホールでショットとアプローチで見せ場を作り、54位から逆転Vの「射程圏内」に浮上。池田勇太(31)は通算7オーバーの54位、谷原秀人(38)は同12オーバーの84位で予選落ち。リッキー・ファウラー(28=米国)ら4人が同4アンダーで首位に並んだ。

 毎年ここで大会を見つめる目の肥えたパトロンたちも知らなかったルートかもしれない。18番パー4。松山の第3打はグリーン奥から段を下るアプローチ。ピンよりもはるかに左へ打ち出したボールがスライスラインに乗って緩やかな弧を描き、カップをかすめた。

 傾斜を巧みに利用した“ブーメランチップ”。パトロンを熱狂させ、米FOXスポーツは公式ツイッターで「ヒデキ・マツヤマが想像力豊かなショットでエンターテインメントを提供してくれた」と動画付きで称賛。ただ、本人は「何回も映像も見ていますし、練習ラウンドをしても、あの寄せ方しかないんで」と涼しい顔だった。25歳で早くも6度目の出場。かつて大会公式サイトに「若きマスターズのベテラン」と紹介された男がその経験値を見せつけ、スコアを保った。

 15番パー5では、残り245ヤードからピンそば3メートルに2オンしてバーディー。17番パー4はグリーン右奥のラフから60ヤードを1・5メートルに寄せてパーセーブ。そして、衝撃の18番。いずれもオーガスタと好相性を誇る松山がデータ上、苦手な傾向にあるホールだった。15番は大会通算平均スコアが4・78で“最も易しいホール”とされるが、松山の平均は4・89。7位だった昨年も4日間パーが並んだ。17、18番も平均を下回っており、決勝ラウンドで重要性が増す終盤ホールで、好プレーを重ねた意味は大きい。

 2日間通算のパーオン率72・22%は全体トップ。前日91位と苦しんだパットの項目も修正して14位に上げた。36ホール終了時点では56年バーク(米国)が8打差を逆転して勝った例がある。射程圏内かと問われ「まあ、そうですね」。さらに続けた。「明日、明後日(の予報)は風が吹かないので、我慢しているだけじゃチャンスはない。自分が頑張るだけ」。日本の悲願は、今年も松山に託された。【亀山泰宏】