松山英樹(25=LEXUS)が、残り8ホールから逆転を喫して涙を流した。1打差2位から一時は単独首位に立つも、同組ジャスティン・トーマス(24=米国)に競り負けて日本男子初のメジャー制覇はならず。5バーディー、6ボギーの72で通算5アンダーの279で5位だった。試合後、1月に結婚し、7月には第1子が誕生していたことを発表。メジャーVを届けられなかった悔しさは募るが、来季の偉業達成へ「勝てる人になりたい」と誓った。

 あふれる感情の波を止めることができなかった。松山は、テレビインタビューで何度もタオルで顔を覆った。カメラをはしごする間、しゃがみ込んで気持ちを落ち着ける時間ももらった。人目につく場所でこれだけ内面をさらけ出すのは、ここ2年ではないこと。頂点に迫った分だけ、悔しさが募った。

 これまでのメジャーで最も近い、1打差からの18ホールは「日本ツアーでアマチュアでやっていた時のような緊張の仕方でした」。2番でボギーが先行も、ショットがさえて6、7番で連続バーディー。8番で単独トップに立った。バーディーとした10番。J・トーマスのバーディーパットは、左フチで10秒ほど静止した後、カップへ転がり落ちた。「9番でも難しいパットを入れてましたし、10番でああいう形でバーディーを取って『何か持ってるな』と思いましたけど…」。

 11番は悪い予感を断ち切るような完璧なドライバーショット。しかし、フェアウエーからの第2打をグリーン右へ外した。「あのセカンドショットが痛かった。ミスした原因が、トップに立ったからというのとは関係ない感じだったので。バーディーチャンスにつけられる位置からボギーにしてしまったというのが、自分の中ですごくふがいない」。ショートゲームでもしのげず「うまく立て直せなかった」と、ここから3連続ボギーをたたいた。

 14、15番のバーディーで再び1打差として迎えた16番。ティーショットを右に大きく曲げながら、1メートルのパーパットにこぎ着けた。打とうとした直前に間を嫌ったのか仕切り直したが、カップに蹴られ、パターを空に投げ上げた。続く17番でJ・トーマスがスーパーショット。勝敗は決した。最後は相手をたたえ「JT(J・トーマスの愛称)」コールの中を引き揚げた。

 新たに増えた家族のためにも、メジャータイトルにかける思いはさらに強くなっていたはず。「ここまで来た人はいっぱいいると思いますし、ここから勝てる人と勝てない人の差が出てくると思いますし、勝てる人になりたいなと思います。何をしたら勝てるのか(今はまだ)分からないですけど、また一生懸命、練習したいなと思います」。涙を流し、ぬぐった後で湧いてきたのは、もっと強く、うまくなりたいという純粋な気持ち。この悔しさが、栄光への再出発点になる。【亀山泰宏】