元賞金王でツアー通算18勝の藤田寛之(49=葛城GC)が3年11カ月ぶりに首位発進した。自己最多に並ぶ6連続を含む8バーディー、1ボギーの7アンダー64で回り、宋永漢(韓国)、ブレンダン・ジョーンズ(オーストラリア)とトップに並んだ。

久しぶりの好感触だった。4番パー5で第2打のバンカーショットを1・2メートルに寄せてバーディーを先行させた藤田は5番で6メートル近い距離を沈めて2連続、続く6番パー4ではグリーン手前の花道からサンドウエッジで放った第3打をチップイン。9番まで「最近の調子では想像もしていなかった」という6連続のバーディーラッシュだった。

日本オープンの6連続バーディーは詳細記録が残る99年以降で最多。藤田自らも14年9月、ANAオープン第3日でマークして以来の自己最多タイだ。同年11月の三井住友太平洋VISAマスターズ以来、3年11カ月ぶりの首位発進に「スコアからいくと120点。自分でもびっくり。大変うれしい」と素直に喜んだ。

今季初のトップ10入りとなる8位だった先月のトップ杯東海クラシックで、師匠の芹沢信雄に1日3回の指導を受けた。「弟子入りした時のようにしつこく」質問し、スイングを修正。米5勝のパーネビック(スウェーデン)の練習を参考にティー2本をゲートのように立たせてボールを通過させるパッティング練習で「安定してきました」。手応えを示しつつも「まだ半信半疑です」と危機感もにじませた。

12年賞金王は、14年9月のダイヤモンド・カップを最後に優勝から遠ざかる。試合間隔が空けばスイングスピードの低下を実感。故障の回復の遅さも痛感するなど年齢の「壁」にぶち当たる。4年前まで優勝を意識した日本オープンも「最近は出られてほっとしている」。今年の賞金ランク67位でシード権の確保も心配していると明かす。

今年の日本プロを制した同世代となる谷口の姿に「勇気をもらった」という藤田は「まずは明日。少しでも上位に残れるように」。勝てば史上6人目の生涯獲得賞金15億円突破となる。大会初制覇へ、謙虚に、貪欲に。元賞金王は静かに燃えている。【藤中栄二】