国内女子ゴルフの今季注目選手14人を紹介する連載の2つ目のテーマ「新星」の3人目は、史上3人目の女子高生プロ、山口すず夏(18=環境ステーション)です。

20年東京オリンピック(五輪)出場を目指し、昨年末にプロに転向。現在、米女子ツアーのISPSハンダ・ビックOP(オーストラリア)に出場中で夢に向かって大いなる1歩を踏み出している。

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山口が、7日開幕したISPSハンダ・ビックOPでプロデビューを果たし、予選を53位で通過した。第1日に4アンダーで10位。強風の中、行われた第2日は、一時、予選落ち(通算イーブンパー)となるスコアまで落としながらも、18歳とは思えぬ強心臓ぶりを発揮し、後半で2バーディーを奪って1アンダーまで戻した。「小さいミスから崩れてしまったので悔しいが、最後は持ち直して良かった」と上々のプロデビューに納得した。

まだあどけなさがたっぷりと残る表情の裏に、底知れぬ覚悟を秘める。高校生でプロに転向した選手は、過去に宮里藍、畑岡奈紗しかいない。急ぎ足で厳しい世界にあえて飛び込む決断をした背景には、20年東京五輪がある。昨年11月、今季の米女子ツアーの出場資格を争った最終予選会で36位に入り、出場権を得たことで、小6から夢描いてきた「五輪」挑戦のチャンスが浮上し、一気に動いた。

五輪出場へは、世界ランキングで日本勢上位2人に入ることが必要だが、現在521位。11月の国内プロテストを受けてからでは間に合わない。米ツアーで結果を出し、大舞台に滑り込むため、プロの世界に飛び込んだ。「今からだと米ツアーじゃないと夢には届かない。世界中が注目する五輪で金メダルを取りたい」と高い目標を掲げる。

父との二人三脚で夢をつかむ。7歳で父と兄の影響で競技をスタート。15年の全米女子オープンに日本人最年少の14歳で出場、昨年1月にはオーストラリアアマチュア選手権で日本人初優勝するなど、アマ時代から「天才少女」と呼ばれたが、その横にはいつも父・裕之さん(58)がいた。練習はもちろん、遠征先への車での送迎、キャディーとすべてを担い、支え続けてくれた。

さすがに米ツアーではキャディーは務めないが、会場への送迎、食事の担当はこれまで通り、変わらない。そんな父にオーストラリア遠征前のイベントで手紙を読んだ。「お父さんがいてくれたおかげでここまでこられた。これからは私が恩返しをしていく番」と感謝を伝えた。

目指す姿は、ツアー80勝を挙げるタイガー・ウッズ(米国)。「強くてすてきな選手」と憧れる。ビッグな夢を描く原石が、世界でさらなる輝きを放つ。

◆山口すず夏(やまぐち・すずか)2000年(平12)8月2日、神奈川・相模原市生まれ。7歳からゴルフを始め、中嶋常幸主宰のトミーアカデミーで研さんを重ねる。東京・共立女二高2年だった17年の全国高校選手権春季大会を制覇。米女子ツアーは、昨年のISPSハンダ・オーストラリア女子OP57位が最高。得意クラブはパター。家族は両親と兄。160センチ、55キロ。