上田桃子(32=かんぽ生命)が、大逆転で1年5カ月ぶりのツアー優勝を果たした。5バーディー、3ボギーの69で回り、通算6アンダーの207。前夜に原因不明の右手中指痛を発症。前半終了時点で首位に3打差をつけられながら「指1本を離して」プレーし、不屈の闘志で勝利を手繰り寄せた。日本開催ツアーで通算14勝目。今季開幕からの3戦で、日本勢が優勝を独占し、これは06年以来13年ぶりの快挙となった。

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前夜、突然の痛みに耐えきれず、上田は目を覚ました。右手中指が熱を帯び「ズキン、ズキン」とうずいた。「毒か、何かに刺されたか。それとも骨が折れているのか」。朝になっても原因不明の痛みは残ったまま。朝食もとらず、はり治療をして会場に向かったが、棄権が頭をよぎった。母八重子さんに「最善を尽くそうよ」と言葉をかけられて出場を決意。2位から出て、抜きつ抜かれつの大逆転劇で、勝利を手にした。

「朝、こんなに手が痛くなったのもまさか。プレーできたのも、まさか。まさか、まさかの連続でした」

ドラマのような優勝劇だ。元世界ランク1位申ジエとのV争い。5ホール終了時点で上田が単独首位に立つも8、9番の2連続ボギーで一時は3打差に後退。この時点で、勝利は絶望的かと思われた。14番パー3で6メートルのバーディーパットを沈めて息を吹き返すと、その直後に1組後の申ジエが14番ボギー、15番ダブルボギーと崩れた。試合中も痛み止めを服用し、我慢のプレーを続けてきた上田に神様はほほ笑んだ。

「指を(グリップから)離して、1本ないと思って打ちました。下半身で打つ…。プロになってから心がけてきたことが生きた。不安でしたけど、右手がダメでもいけるんだと思った」

17年10月のマスターズGCレディース以来、1年5カ月ぶりの国内通算14勝目。今季開幕から日本勢が3連勝するのは13年ぶりだ。

「若い後輩たちから、いい気迫をもらっている。『まだまだ、負けないゾ!』という思いがあります」

6月で33歳。ケガ、試練に見舞われながらも、衰え知らずの花が、美しく咲いた。【益子浩一】