今季からツアー本格参戦する河本結(20=エリエール)がツアー初優勝を飾った。単独首位から出て4バーディー、2ボギーの70で回り、2位に5打差をつける大会新の通算15アンダー、201を記録。キャディーを任せた弟力(りき、19)が観衆と激突し両手を流血しながらも、姉弟で勝利をつかんだ。日本勢の開幕4連勝は14年ぶり。河本は昨夏のプロテストに合格した日体大3年生で、98年度生まれの「黄金世代」から新たなスターが誕生した。

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弟から渡されたクラブには、血がにじんでいた。この日朝、河本がスタート前の練習に向かう際のこと。大勢のギャラリーが詰めかけた会場の坂道で、弟の力が観客と激突しバッグごと転倒した。クラブと姉を守ろうとしたため、両手の皮がめくれ流血。医務室に運ばれた。周囲からはキャディーの交代を提案されたが断った。応急処置を受ける弟に練習場から電話をかけ「どうしてもやって欲しい」と訴え、弟も「俺がやる」と答えた。

「骨が折れていても、弟にバッグを担いでもらいたかった。ツアーは一流選手ばかりで、勝つには自分を信じるしかない。弟がいれば、私は安心できるから」

2位と4打差の単独首位で、最終ラウンドの旅は始まった。動揺が残る1番をボギーとし、同組の脇元がバーディー。いきなり2打差に詰められた。クラブに付いた血、必死で付いてくる弟の姿を見て「自分のスタイルを貫こう」と心に決めた。

中学卒業後に愛媛の親元を離れ、茨城にある日本ウェルネス高に進学。だが水が合わず1カ月で故郷に戻り、松山聖陵高へ編入した。ゴルフ部は1人だった。翌年に弟の力が入部。アマチュアながら男子ツアー開幕戦・東建ホームメイト杯(18日開幕)出場が内定している弟と、二人三脚で追い続けた夢だった。

11番で6メートルのバーディーパットを沈めた時点で2位と6打差。優勝を確信したのは、14番で第1打を放った直後だという。大観衆が待つ最終18番。約50センチのバーディーパットを沈めて姉弟が抱き合うと、力は「ウルっときました」と言ったが、河本に涙はなかった。

「トイレに行きたかった。(18番の)ティーショットから漏れないか心配でした」。笑いながら明かした後に、真剣にこう言った。

「来年には賞金女王。3年かけて全米女子オープンを取る準備をしています」

20歳の野心は無限大に広がっている。【益子浩一】

◆黄金世代のツアー優勝 有望な女子プロ選手が多い98年度生まれを「黄金世代」とされ、河本で優勝は5人目。河本のプロ12戦目での勝利は、17年畑岡奈紗のプロ5戦目に続き黄金世代で2番目のスピード。アマチュア時代の15歳で優勝した勝みなみは、昨年11月の大王製紙エリエールレディースでもプロ初優勝。新垣比菜、大里桃子も昨年、ツアー優勝した。未勝利ながら三浦桃香、原英莉花ら多くのスター候補がいる。

◆女子ゴルフのツアー開幕戦からの日本勢による連勝 今季開幕戦から比嘉真美子、鈴木愛、上田桃子、河本結と日本勢が14年ぶりに4連勝した。05年は藤野オリエ、服部道子、横峯さくら、藤井かすみ、米山みどり2回、不動裕理2回、宮里藍2回、川崎充津子と日本勢が11連勝した

<河本結の使用クラブ>

▼1W=キャロウェイ エピックフラッシュ・サブゼロ(長さ45インチ、フジクラスピーダ569 エボリューション2)▼3、5W=同 ローグスター▼UT=同 XR OS(22度)▼アイアン=同 X-フォージド18(5~9、PW)▼ウェッジ=同 マクダディー・フォージド(48、52、58度)▼パター=オデッセイ トゥーロン・アトランタ▼ボール=同 クロムソフトX

◆河本結(かわもと・ゆい)1998年(平10)8月29日、松山市生まれ。5歳から競技を始め、松山聖陵高を経て現在は日体大体育学部3年。日体大2年の弟力は300ヤード超の飛距離で“松山2世”と呼ばれる。趣味は映画観賞、カラオケ。163センチ、58キロ。