【オーガスタ=松末守司】最高の大舞台で完全復活劇を演じた。2打差2位から出たタイガー・ウッズ(43=米国)が6バーディー、4ボギーの70で回り、通算13アンダー275で11年ぶりのメジャー制覇を成し遂げた。05年以来14年ぶり5度目の大会優勝を2人の子供の前で成し遂げ、父として初めてグリーンジャケットを着用した。これで18勝のジャック・ニクラウスに次ぐメジャー通算15勝目。歴代最多のサム・スニードにあと1勝に迫る通算81勝目を挙げた。

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すべての視線が最終18番のグリーン上に注がれた。ウッズがパットの構えに入ると静寂に包まれた。パッティングの音が響き、球がカップに吸い込まれるとオーガスタ・ナショナルGCに「タイガー・コール」がこだました。パトロンに向かって両手を掲げ、復活劇をアピールした。08年全米オープン以来11年ぶりのメジャー制覇。メジャー初制覇した原点の聖地で成し遂げた。

ウッズ カムバックを果たしてマスターズで優勝できるのは最高のこと。

大歓声に包まれながらグリーンに設置されたテレビ塔の奥に歩を進め、10歳の長男チャーリーアクセル君を抱きあげた。マスターズ初優勝の97年、心臓に合併症を抱えながら会場に駆けつけた父アール氏(06年に死去)と抱き合って歓喜したシーンと重なった。22年前を思い出し「(97年は)父が喜んで出迎えてくれたけれど、今回は息子が祝福してくれた」。母クルティーダさん、11歳の長女サムアレクシスさん、恋人エリカ・ヘイマンさんらとも熱く抱擁を交わした。

雷雨予報だった最終日。恒例の全選手1番スタートではなく、1、10番に分かれ、3人一組でプレーという異例の組み合わせで、ウッズはモリナリ、フィナウの最終組に入った。赤いシャツに黒いズボンという「勝負服」で臨むと安定感抜群のプレーをみせつけた。後半から一時、2打差に10人前後がひしめく大混戦も、15番(パー5)で2オンに成功し、バーディーを奪って抜け出した。16番(パー3)では第1打をグリーンの傾斜を利用し、60センチに寄せて勝負を決めた。

激しい優勝争いに「だから髪が薄くなっているだよ」と笑い飛ばすが、パッティングの練習をしすぎると背中痛が出るなど肉体の衰えは隠せない。昔の力強さがないものの、代わりに経験という武器がある。優勝争いした同組2人とは対象的に最後まで冷静。「このコースをプレーする方法として頭に小さな図書館を持っている」と胸を張った。

18年7月の全英オープンは最終日最終組で回った。07年生まれの長女、09年生まれの長男を英国に招待しながら優勝を逃し、自らに失望したという。マスターズ最終日前は「父は97年にここにいた。そして今、私は2人の子供を持つ父としてここにいる」と気合を入れ直して臨んだ。

辛い日々しか知らない子供たちに父の威厳を示し「家族は諦めずに戦った僕を誇りに思ってくれる」と笑顔。タイガー伝説の新章は「強いパパ」で幕を開けた。