女子ゴルフのAIG全英女子オープンを樋口久子以来、日本勢として42年ぶりに制した渋野日向子(20=RSK山陽放送)。その強さはどこにあるのか? 国内メジャー第2戦、日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(12日開幕、兵庫・チェリーヒルズGC)を前に、日本ゴルフツアー機構(JGTO)の青木功会長(76)が、一躍時の人となった渋野のスイングを連続写真から解析した。【構成=松末守司】

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何よりインパクトがあるのが、渋野選手の豪快なスイングだ。ドライビングディスタンス245・85ヤード(ツアー全体14位)以上の迫力を与えるが、青木会長が最も特徴的と挙げたのが、「チンバック」。チンバックとは、文字通り、顎を後ろに下げ、右に重心を置くこと。帝王と呼ばれたジャック・ニクラウス(米国)が取り入れていたことでも有名なテクニックで、スイングの連続写真を見つめ、真っ先に指摘した。

青木会長 <1>の構えからバックスイングに入る<2>の頭の位置をみてほしい。後ろの木の枝を参考にすれば分かりやすいが、5センチくらい頭が右足の方に移動している。これは、右にウエートをもっていくことで、軸を保ちスムーズに回転できるようにしている。自然とためができるからダウンスイングで力強いインパクトにつなげられる。軸が安定しているということはミート確率も高い。野球もバッティングは右ウエート。ソフトボールをやっていたと聞いたが、あや(岡本綾子)もそうだが、それも大きいと思う。このチンバックが、スイングの全体をつくっていると言っていい。

<1>に戻り、アドレスについても分析した。

青木会長 スタンスが広く、ハンドダウンで構え、頭を基準にして三角形ができている。猿手だから肘と肘がくっつくくらいの構え。どこを基準に打つかということだが、頭の高さはほとんど上下することなく一定にさせて打っている。見た目にもすごくどっしりしていて、体幹がしっかりしていることが分かる。両親もスポーツ選手と聞いたが、自然と体幹の必要性を分かっているんだろう。

<2>でつくったためを利かし、ダウンスイングに入り振り抜く。ここでも、渋野の特徴がでているという。

青木会長 <7>のインパクトの瞬間、しっかり右にウエートが乗っているし、女子にありがちな右足がヒールアップしていない。体幹がしっかりしているのもあるが、肩など動かす部分が柔らかいのと、左の上腕三頭筋が強いんだろう。ゴルフは左手主導がいい。そして、<6>を見てもちょっとだけ沈み加減になる。低いからパワーが出る。その後の、インパクトゾーンが長く、20~30センチくらいはボールを押しているから飛ぶ。女子ではめったにないが、ボールを押し込む感じで打つにはこれしかない。フォロースルーも体の柔らかさもあって振り切れている。渋野選手のスイングは、男子に近いスイングと言っていいだろう。

全英女子オープンの最終日12番パー4。ドライバーでワンオンさせたシーンを挙げ「思い切りがいい」と気持ちの強さも評価する。

青木会長 これからも自分の好きなようにやって出た結果を自分で考えていけばいいと思う。壁にぶつかることもあると思うが、渋野日向子、というゴルフを築き上げてほしい。

◆青木功(あおき・いさお)1942年(昭17)8月31日、千葉県・我孫子市生まれ。64年プロ入り。ツアー通算51勝、賞金王5回。83年米ツアーのハワイアン・オープンで優勝、米シニアツアー9勝など海外でも活躍。04年世界ゴルフ殿堂入り。15年に旭日小綬章受章。16年3月にJGTO会長に就任。