ツアー開幕の見通しが立たない中、女子プロゴルファーはシーズンに向けた調整を続ける。

日刊スポーツでは主要クラブメーカーの主な契約プロや、使用予定クラブを、クラブ調整のクラフトマン、プロ担当の目から随時紹介。「クラブのプロが見たプロ」として、2020年シーズンの目標や注目ポイントを探る。

第1回は本間ゴルフ契約プロで昨年末の結婚を経て、完全復活を目指す元賞金女王イ・ボミ(31=韓国)。

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新型コロナウイルスの感染拡大は収まらず、世界が閉塞(へいそく)感にあえぐ中、イ・ボミの心も晴れやかではない。3月5日のツアー開幕に合わせて来日するはずが、まだ韓国にいる。とはいえ、昨年末に韓国人俳優イワンと結婚したばかり。思わぬ空白期間を、いい準備期間にしたい。

関係者によると、手料理を始め、家事全般に磨きをかけている。一方で、新しいアイアンをテスト。ツアーワールド(TW)シリーズの新モデルTR20Vを、自分のものにするため、打ち込みに励む。

プロ担当は「自分が不安なく振れるまで、諦めない。ヘッド形状からシャフトのしなり感覚、グリップの太さ…。妥協を許さない。クラブチェンジには時間がかかるタイプでしょうけど、OKが出たら、こちらも安心できます」という。

新モデルは従来のTW747より操作性、直進性、打感で上を行くが、本番で使うためにとことん打つ。たわみ、高剛性フェースを生かして反発力がアップ、縦方向の距離のブレが抑制されたTR20のドライバー(1W)はすぐにフィットしたが、アイアンは別だ。1月中旬から1カ月以上の米国合宿で約30本を試し打ち。現在も2セットを打って、感触を確かめている。

新モデルで結果を出したい思いは、強い。本間ゴルフ契約プロ全体の意見を集約し、できあがった新モデルだが、ドライバー、フェアウエーウッド(FW)、アイアンなどで「イ・ボミ限定モデル」が発売される。本人を中心に決めたイメージカラー「イ・ボミ ピンク」のシャフトを装着。実際に本人も“ピンクのクラブ”で戦う。

圧倒的なパフォーマンスで賞金女王に輝いた15、16年から後は、スイングの乱れから思わぬスランプに陥った。しかし、昨季は優勝こそなかったが、7月以降16戦で10位以内が7度。完全復活間近を感じさせた。

「自分のイメージした距離や弾道を正確に打てるプロゴルファーです。『気持ちよく振れるクラブセッティング』さえ実現できたら…」というプロ担当は「あくまで結果的にですが、開幕が延びたことがプラスに働いてほしい。私たちは『復活のきざし』でなく『復活が見えた』と信じていますから」。周囲も、本人もミセスプロとして、3シーズンぶりの復活優勝にやる気満々だ。【加藤裕一】

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○…イ・ボミの“主婦力”は急上昇中らしい。マネジャーによると、これまでツアーで多忙ということもあり料理する時間がほとんど作れなかったが、一気に腕を上げている。「手料理を作るのがすごく楽しいらしく、メニューもかなり増えているみたいです」という。ツアー開幕のめどが立って、来日する際は、すてきな“ミセスプロ”になっていそうだ。

 

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◆イ・ボミのホンマゴルフ社クラブ

▼1W=TR20 440(ロフト角9・5度、シャフト=VIZARD FD5、硬さR、長さ45・5インチ)▼FW=TW747(3W15度、5W18度)▼ユーティリティー=XP-1(22、25度)▼アイアン=TR20V(5~10I)▼ウエッジ=TW-W(48度)

 

◆イ・ボミ 1988年8月21日、韓国水原市生まれ。建国大卒。ゴルフは12歳から。07年にプロ転向。10年韓国ツアー賞金女王、11年から日本ツアー参戦し、賞金ランク40位で初シード。15年に7勝してツアー史上最高額2億3049万7057円を稼ぎ、初の賞金女王、16年も賞金女王。ツアー通算21勝。昨年末に韓国人俳優イワンと結婚。158センチ、56キロ。