2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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▽2014年(平26)大会(4月17~20日、三重・東建多度CC名古屋)

宮里優作が“覚醒”を予感させる、ツアー通算2勝目を挙げた。首位と1打差の2位でスタートした最終日を8バーディー、2ボギーの65で回り、通算14アンダーの270。2位の岩田寛に2打差の逆転優勝を飾った。前年の13年最終戦、日本シリーズJT杯に続く年をまたいだ国内2連勝となった。

55位、11位と順位を上げて迎えた第3ラウンドは、苦手だった強風を克服した。7番パー4(418ヤード)では、コース近くの気象台で、最大瞬間風速14・9メートルを記録する強烈な逆風の中、第2打をあわやイーグルという10センチにつけた。ピンまで154ヤード。無風なら8番アイアンのところで、8番アイアンを握っていた。「あれで風の中でもスコアが伸びる手応えをつかんだ」と、その後、2バーディーを重ね、通算8アンダーで首位と1打差に迫った。

最終日に入ると、1番からツアー2度目となる5連続バーディーと絶好のスタートを切った。首位に立ち、さらに後続を引き離した。16番パー3を3パットのボギーとし、17番パー5では第2打を左がけ下に落とした。以前の宮里なら焦って自滅することもあったが「不安要素がないので、大丈夫だと思っていました」。前年のツアー初優勝の好影響で堂々とプレーした。

17番をパーで切り抜けると、18番パー4は1メートルのパーパットを沈めた。最終組の1つ前で回っていたが、優勝が決定的なスコアでホールアウトしても、ギャラリーに笑顔で応え、パターを握った右手に少し力を込めただけ。涙の初優勝とは違い、静かに喜びをかみしめた。33歳で初優勝した日本シリーズJT杯の最終日と比較し「あの時は心がざわついていたけど、今日は調子もいいし、追いかけてやるという気持ちでいっぱいでした」と、冷静だったと分析した。結局、この年は1勝止まりだったが、宮里は3年後の17年に、年間4勝を挙げ初の賞金王となった。その礎ともいえる、強風という苦手を克服し、精神的な強さを身に着けた大会だった。