2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

◇   ◇

▽2016年(平28)大会(7月21~24日、福島・グランディ那須白河GC)

プロ5年目の時松隆光が、大会記録を更新する通算25アンダーの263で、ツアー初優勝を飾った。同じ月に行われた下部ツアー優勝の資格で出場し、ツアー優勝まで上り詰めた史上初のケースだった。今年、日本ゴルフツアー選手会の新会長に就任するまでに実力、知名度とも成長する時松の原点ともいえる大会となった。

2位でスタートした第3日に、10バーディー、1ボギーで、コース記録に並ぶ63をたたき出した。2位に5打差をつける単独首位に立った。それでも「自分でも信じられない」と、初優勝が近づいた実感はなかった。プロ5年目でツアー最高成績は、14年日本オープンの11位。トップ10に入ったことすらなかった。

最終日は何度もピンチに陥ったが、しのぎ続けた。6番パー4の第1打は、右に曲げて暫定球を打った。7番パー5の第2打は、左OB間際だった。8番パー3では、3メートルのパーパットを残した。それをすべてパーセーブし、前半はスコアを1つ伸ばす35。後半33のの流れを呼び込んだ。

最終18番で1メートル弱のウイニングパットを沈めると、派手なガッツポーズはなく、静かに喜びをかみしめた。篠塚武久コーチから授かった「コースと友達になりなさい。ガッツポーズとかしてコースにさからってはいけない」という教えを忠実に守っていた。最終日は5バーディー、1ボギーの68。2位岩本高志に3打差まで詰められながら逃げ切り「今日は長かった」と、初体験の優勝争いを勝ち抜き、うれしそうに振り返った。

時松は、実はこの1週間後の7月31日に、ネスレ招待日本マッチプレーレクサス杯でも優勝した。その試合で国内最高額の賞金1億円を獲得。7月1日に下部ツアーを制して180万円、この試合で1000万円、1週間後に1億円-。夢のような1カ月間となった。

■過去5年の優勝者

15年 プラヤド・マークセン(タイ)

16年 時松隆光

17年 宮本勝昌

18年 秋吉翔太

19年 星野隆也