新型コロナウイルスの感染拡大で中止が続いていたゴルフの国内女子ツアーが、今日25日に第17戦アース・モンダミン・カップ(千葉・カメリアヒルズCC)で開幕する。来夏に延期された東京五輪の出場権争いが再スタート。各選手は今季初戦を前に、現地で最終調整を終えた。注目の渋野日向子(21=サントリー)はどんなスタートを切るのか-。テレビ解説者などの視点で渋野を見てきた山崎千佳代プロ(56)に聞いた。

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渋野さんは今年もすごいのか? みなさんの注目はまずそこでしょう。私は「期待度100%、120%」です。その理由を語る前に、少し昔の話をさせて下さい。

彼女を初めて見たのは、18年のステップ・アップツアー(下部ツアー)です。当時はハンドダウンのアドレスが印象に残った程度でしたが、昨年4月の熊本(KKT杯バンテリン・レディース)で「ん?」と思ったんです。初日最下位から第2日の66で予選を通過した。まず、その数字に驚き、3試合後、彼女が初優勝したサロンパス・カップでプレーのすごみを感じました。

「大きな球」を打っていました。長い5番パー4(410ヤード、昨年大会ホール別難易度2位)の第2打。多くの選手がユーティリティーでもグリーンに止められないのに、5番アイアンで止めてきた。男子のような強烈な球。それを2、3日目(ともにバーディー)に見て「(優勝)行っちゃうかな」と予感しました。

とはいえ、彼女の最大の強みはパットだと思います。昨年のAIG全英女子オープンの最終日最終18番、歴史に残るウイニングパット。下りのライン、外してもプレーオフ。距離を合わせるのがセオリーです。なのに、ガツンと打って入れた。普通、あのタッチでは打てません。凡人にはわからない「すごい人」です。

さて本題です。なぜ、彼女に不安を感じないのか? 昨年の全英優勝後、賞金女王が狙える状況で、青木コーチとアプローチばかり黙々と練習していました。いつもより3カ月半長かったオフも58度のウエッジを4本ダメにするほど、ショートゲームに熱を入れたそうです。目先でなく先を見据えて、1点に絞る。みんな、同じようなことをしますけど、武器にするまでやりきれない。たいていブレて、ちょっと違う方向に行く。それがない。鈴木愛さんが遅くまで1人で練習グリーンにいて…というのと同じです。

渋野さんが本来持つ豊かな感性に「1ヤード刻みのゴルフ」が加わる。それが絶対ハマると断言はできなくても、結果が出れば、一気に「世界レベルのゴルフ」へ-。私は、わくわくしています。(プロゴルファー)

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◆山崎千佳代(やまざき・ちかよ)1964年(昭39)2月10日、東京都生まれ。日体大を中退し、86年9月にプロテスト合格。87年賞金ランク42位で、88年から12年連続賞金シードを保持。98年大王製紙エリエール・レディースなどツアー通算8勝。現在はテレビ中継で年間10試合以上で解説、ラウンドリポーターなどを務める。166センチ。

◆東京五輪代表 来年6月末時点の世界ランク(停止中)で争う。同15位以内なら各国最大4人、16位以下なら同2人(15位以内1人ならプラス1人)が代表権を得る。世界ランクは過去2年(104週)の総獲得ポイントを出場試合数で割った平均ポイントで決まり、獲得ポイントは直近13週を重視、それ以前は一定割合で減っていく。各大会ポイントは世界ランク上位者の出場数に比例、優勝ならメジャー100、通常の米ツアー約40、国内ツアー約20。現在、日本の代表争いは1番手が世界4位畑岡で同12位渋野、同14位鈴木と続き、現状通りなら3人とも代表になる。

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渋野は24日、練習ラウンドで9ホールを回り、最終調整した。金田久美子らと4人で回る途中には、別組の成田美寿々、青木瀬令奈らに手を振るなど、リラックスした様子も見せた。前日23日の会見では、トレーニングによる筋肉痛の影響で状態を「15%」と低く自己評価。この日は「ちょっと上がりました」と、笑顔で状態が上向いたと報告した。

第1日はツアー23勝の横峯さくら、ルーキー西村優菜と同組で回る。米国を主戦場とする横峯とは、昨年3月以来の同組とあり「楽しみな気持ちでいっぱい」とコメント。西村については「みんなで盛り上げられたら」と先輩らしく語る一方で「先輩として見せないといけないという、ちょっとプレッシャーはあるかもしれない」とも話した。