「はざま世代」の稲見萌寧(もね、21=都築電気)が、昨年7月のセンチュリー21レディース以来、1年3カ月ぶりのツアー通算2勝目を飾った。8位で出て5バーディー、ボギーなしの67で回り、通算5アンダー、139。浅井咲希、ペ・ソンウと並んだが、3人によるプレーオフ1ホール目で強気に攻め、決着をつけた。「黄金世代」と「ミレニアム世代」に挟まれた99年度生まれが、台風で第2日が中止となった、36ホールの短期決戦を制した。

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右手で2度、3度と、稲見はかみしめるようにガッツポーズをつくった。通算5アンダーで並んだ、3人によるプレーオフ1ホール目。18番パー5で、ペがパーに終わり、浅井は4打目のアプローチを寄せ切れない中、稲見が4メートルのバーディーパットを決めた。笑顔で引き揚げていたが、仲の良い高橋彩華の出迎えと祝福には涙が流れた。「優勝した瞬間は、うれしい気持ちだけだった。でも(高橋とは)毎日のように練習していたので」と、思わずこみ上げるものがあった。

ラストスパートで一気に優勝をさらった。14番までは通算2アンダーで、トップの浅井とは3打差。だが15番で「4メートルぐらいのパットが決まってから流れが良くなった」と、3つ目のバーディーで2差に詰めた。17、18番は「直接入れる気持ちだった」と、イーグルも視野に強気に攻めて連続バーディー。昨季ツアーでパーオン率1位の正確なショットで、18番は70センチにつけた。勢いをそのままに、プレーオフを制した形だ。

同じ18番の第3打でも、最初は残り116ヤードから、プレーオフは残り86ヤードからと、30ヤードも飛んでいた。慎重に打ちたくなるティーショットで「マン振りしました」と、18ホールの終盤よりも、さらに強気の攻め。そんな強気は、海外初挑戦となった8月のメジャー、AIG全英女子オープンの経験に裏打ちされていた。初めて味わう海沿いのリンクスコースで「人生最大の風」を経験。「ボコボコにされたかった」とはいえ、予想以上に過酷で通算14オーバーと予選落ちした。

新型コロナウイルス感染症対策の自主隔離などで、渡英の前後3試合を欠場した。「早く取り返せるようにと、焦りで空回りしていた」と、前週までトップ10入りは1度だけ。それでも渡英は「1回も後悔したことはない。風をしっかりと読むようになったし、行かないと味わえない経験」とプラスにとらえた。全英女子を「暴風雨」と表現したのに対し、台風の影響で、風が穏やかではなかった今大会を「ゴルフ日和」と言う、たくましさがあった。

1学年上は渋野日向子らの「黄金世代」、年下には先にツアー2勝している古江彩佳らの「ミレニアム世代」、笹生優花らの「新世紀世代」が控える。自らを「はざま世代」と呼ぶが、名前の「モネ」は世界を見据えたもの。世界を知り、世界へと再び飛び立つ日まで、国内で優勝を積み重ねるつもりだ。【高田文太】

<稲見萌寧(いなみ・もね)アラカルト>

◆生まれ 1999年(平11)7月29日、東京・豊島区生まれ。家族は両親。現在は日本ウェルネススポーツ大に在学。

◆ゴルフ歴 9歳から始め、12年関東小学生選手権、14年関東中学生選手権、15年東日本パブリックアマ優勝。ツアーは15歳で出場した15年中京テレビ・ブリヂストン10位、16年三洋電機レディース8位。

◆プロ入り後 18年7月にプロテストに高卒(日本ウェルネス高)で1発合格。昨年のセンチュリー21レディースで初優勝。昨季は賞金ランキング13位で、LPGA(日本女子プロゴルフ協会)新人賞受賞。

◆パーオン率1位 本格的に参戦した昨季は、78・2079%でツアー1位。この日も「全てパーオンしました」と、今季も78・5185%でツアー1位。

◆名前の由来 フランスの画家クロード・モネではないが「世界に出ても覚えてもらえるように」と、モネの世界的な知名度に、あやかっている部分はある。

◆サイズ 166センチ、58キロ。

◆趣味 音楽鑑賞

<稲見萌寧の優勝クラブ>

▼1W=キャロウェイ マーベリックサブゼロ(シャフト=USTマミヤ ジ・アッタス、硬さS、ロフト10・5度、長さ45・25インチ)▼3W=ブリヂストン TOUR B JGR(15度)▼5W=同(18度)▼4UT=同(22度)▼5UT=同(26度)▼アイアン=5I=ブリヂストン TOUR B X-CBP、6I~PW=同X-CB▼ウェッジ=タイトリスト ボーケイ デザインSM7(52、58度)▼パター=テーラーメイド トラスTB1▼ボール=ブリヂストン TOUR B XS