黄金世代の小祝さくら(22=ニトリ)が21年初戦を制した。首位と2打差3位から出て、68をマーク。14番で10メートルを“壁ドン”で沈めるなど、バックナインで4バーディーを量産して通算14アンダー、ツアー通算3勝目の逆転Vだ。今年は同世代初の「賞金女王」が目標で、賞金ランクは4位から3位へ。首位笹生との約3100万円差を約940万円に詰めるロケットスタートを決めた。1打差2位は森田遥(24)。渋野日向子(22)は13位だった。

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優勝賞金2160万円をかけた緊張感は…なかった。最終18番パー5。小祝は1メートルのバーディーパットを沈めた。最後の72ホール目で単独首位に立った劇的V。約1年3カ月ぶりにコースに入ったギャラリーも沸いた。しかし、ガッツポーズもせず、ほほ笑んで小畑貴宏キャディーと握手しただけだ。

森田と首位で並んで迎えた最終ホール。残り60ヤードの第3打を前に、ピンより気になったものがあった。グリーン横に飾られた優勝副賞ヤンマーフィッシングボート。「ヤンマーのボートがすごい欲しくて。優勝して、乗りたいなって」。船舶免許はない。「母が欲しがっていて、釣りにも行くので」。母ひとみさんの笑顔が頭に浮かんだ。

流れを呼び込んだ14番は衝撃的だった。10メートルのバーディーパット。明らかに強すぎる球がカップの壁に激突、ピョコンと跳ねてカップに消えた。「これはやばいぞ、絶対強いなと。外れたら、3メートルはオーバーしたんじゃ…」。入った瞬間を「ビンゴ大会に当たったぐらいの感じ。あれが入るんだ」と振り返り、優勝インタビューで爆笑を誘った。

癒やし系ながら強い。それに見合う陰の努力がある。昨年のツアー終盤にティーショットがブレたことで、オフにスイングを見直した。力強さを求め、インパクトで左足かかとが浮く“ジャンプ”を抑え、べた足に。より感触を確かめられるよう、シューズを脱ぎ、はだしでショット練習を重ねた。だからこそ、強い風雨で難易度が増した最終日にも、崩れなかった。

辻村明志プロを師事する上田桃子、吉田優利らと行った2月の宮崎合宿で、毎年恒例の目標を立てた。「複数回優勝と賞金女王」。プロ4季目で初めて、国内ツアーの頂点を具体的に口にした。理由を問われると「何でって言われると…う~ん…特にないんです」と困った顔をする。

18年からのツアー皆勤出場。20-21年シーズンも開催全15戦に出場中、休む予定はない。「何でって言われると…休んでも別にすることがないんで」と力むところがない。「今年もびっちり試合が入ってますから」。賞金ランクは4位から3位へ。自然体で試合に出て、小祝は女王の座に近づいていく。【加藤裕一】

▽河本結「前半でつまずいたので、上位に、上位に、という気持ちが先行していた。(次週は高知県開催、出身は愛媛県で)同じ四国なので気持ちも落ち着いてプレーできると思う」

▽古江彩佳(77と崩れて33位)「ロングパットが2回ぐらい入って運もあったけど、それ以外は運もなかった。頭もちゃんと使えていなかった。(次週は)切り替えて新しい気持ちで挑みたい」

▽鈴木愛(スコアを2つ落とし通算3オーバーで47位)「日に日にショットは良くなっていったんですけど、うまくかみ合わなかった感じ。(次週は)好きなコース。パターはいいので、あとはショットかな。特にドライバー」

◆国内女子ゴルフツアーの連続試合出場 今堀りつの482試合(82~95年)が最高記録。出場基準が限られる試合(JLPGAツアー選手権リコー杯など)を含むと表純子の241試合(11~17年)が最高となる。小祝は17年のプロテスト合格後、18年以降に行われたツアー全92試合に出場を継続中。小祝と同学年の優勝経験のある同期選手と比べると勝みなみが82試合、新垣比菜が76試合、浅井咲希が59試合。黄金世代の“鉄人”小祝がどこまで記録を伸ばすかにも注目だ。

◆女子ゴルフ黄金世代 98年度生まれ(98年4月~99年3月生まれ)は「黄金世代」と呼ばれ、多くの人気選手がいる。ツアー優勝は9人で、日米8勝の畑岡奈紗を筆頭に、同5勝の渋野日向子、日本ツアー4勝の勝みなみ、同3勝で原英莉花と小祝さくら、同1勝で新垣比菜、大里桃子、河本結、浅井咲希と続いている。なお、昨年3勝の古江彩佳や西村優菜らがいる00年年度生まれは「ミレニアム世代」、現在賞金ランキング1位の笹生優花や今大会4位の西郷真央らがいる01年度生まれは「新世紀世代」と呼ばれ、しのぎを削っている。

<小祝さくらの優勝クラブ>

▼1W=ダンロップ スリクソンZX5(シャフト=グラファイトデザイン ツアーAD PT5、ロフト角9・5度、硬さS、長さ45インチ)▼3W=同スリクソンZX(15度)▼ユーティリティー=同スリクソンZH85(3U19度、4U22度)▼アイアン=5I~9I、PW=同スリクソンZ585▼ウエッジ=クリーブランドRXT3(47、51、58度)▼パター=オデッセイ ストロークラボ セブンCS▼ボール=ダンロップ スリクソンZスターXV