女子ゴルフで東北高出身の有村智恵(33=日本HP)が、東日本大震災から10年の11日、“第2の故郷”への思いが高まり、涙を流した。今年のツアー2戦目、明治安田生命レディース開幕を翌日に控えたこの日、最終調整後に会場の高知・土佐CCで会見した。

被害の大きかった宮城県は、高校時代の3年間を過ごした思い出の地だ。津波で流された道路を使って、日々通った練習場があった。震災が起きた11年から、山元町の山下小を毎年慰問してきた。当時は試合のために高知におり、テレビの映像を見て「言葉を失った」という。その後、生まれ故郷の熊本も大きな地震に見舞われ、さまざまな思いがよぎったようで、会見中に顔を覆って涙をぬぐい、沈黙する場面があった。

ちょうど10年前も、この日と同じく土佐CCにいた。「この試合に来る度に、あの時を思い出すし、ここ(土佐CC)に来ると、少しだけ悲しい気持ちになる」という。ただ、当時とは違う強い使命感がある。「あの時(10年前)は、ゴルフをやっていていいのか、ゴルフが人の役に立つのかという気持ちが強かった。でも今は、コロナの状況もあるし、スポーツの力が求められている」と、プロゴルファーにしかできない、プロゴルファーの存在価値を信じられるようになった。

「この10年、仙台に試合で戻る度に『復興しているな』と思う。震災の年から毎年小学校に行って『あの時に会った人が見ているかもしれない』と思うと、私も力をもらえた」。そんな“第2の故郷”への恩返しの思いが、現在の活力になっているようだ。【高田文太】