快挙達成の日、母校の職員朝礼はテレビがついたままだった。

11日(日本時間12日)、米男子ゴルフツアーのマスターズで日本人初優勝を飾った松山英樹(LEXUS)。歴史をつくった29歳は、高知県須崎市にある明徳義塾高で学んだ。

12日の朝方に行われた最終日。午前6時半、敷地内にある研修会館では、ゴルフ部の後輩約30人がスティックバルーンを手に応援していた。

同8時。職員朝礼はテレビをつけたままで始まり、11年前に卒業した教え子の偉業を拍手で祝った。

松山の高校生時代、その実力はゴルフ部外にも知られていた。

1年時のクラスは野球部、サッカー部、ゴルフ部などで形成。プロ野球・楽天の石橋良太投手(29)らとクラスメートだった。

松山の口数は少なく、決して目立つ方ではなかった。だが、ゴルフに向き合い、努力する様子は、練習を見たことがない者でも、伝え聞くほどだったという。

人柄は卒業後にも表れた。海外で戦う立場にありながら、帰省時には母校へ顔を出し「あっ、先生!」とあいさつを欠かさない。

1年時の担任だった野球部長の佐藤洋さん(42)は、その姿が印象的という。

「『世界の英樹』になっても偉そうじゃなく、何も変わらない。忙しいと普通、疎遠になってしまうでしょう。本当にすごいです」

同校2年だった08年に全国高校選手権で優勝。佐藤さんは最近、校外で明徳義塾高の話をしている際に「松山英樹の…」と言われることが増えたと実感する。

「昔は『野球の!』と言われていましたが…。野球部も英樹に負けずに、頑張らないといけませんね」

グリーンジャケットを羽織った先輩は、米国から母校へ、唯一無二のパワーを届けた。【松本航】