金谷拓実(22=フリー)が3バーディー、2ボギーの70で回り、通算11アンダー、202で今年初戦を制した。アマチュア時代を含め通算3勝目、賞金ランキングもトップに浮上した。マスターズを制した東北福祉大の先輩・松山英樹から電話で「東京五輪に一緒に出ようぜ」と激励され、五輪への思いを強くしている。今大会は選手に新型コロナウイルス感染者が出たため17日の第3日が中止。計54ホールの競技となり、賞金加算額は本来の75%となった。

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まず1勝。米ツアー参戦、そして逆転での五輪出場を目指す金谷が、目標へ近づく大きな勝利をあげた。運命を分けたのは終盤の17番パー5。同じ最終組で2打差につける木下、1打差に迫る中島がそろってティーショットを池に落とした。「それを見ていいショットが打てた。前のホールと風の方角が変わった。自分も先に打っていたら池に入れていたかも」。最大瞬間風速13・1メートルを記録した強風。ヤマ場で2人がスコアを伸ばせない中、しっかりとバーディーを奪うと自然とガッツポーズが出た。

激戦を制した裏に、憧れの大先輩の言葉があった。第2日のラウンド後、松山へ電話をかけた。祝福の言葉を直接伝えると「『五輪に一緒に出ようぜ』みたいなことを言ってくれました」。そのためにもこれからの約2カ月間が勝負となる。目標とする東京五輪や海外メジャー出場には世界ランキングを上げることが必須だ。金谷は現在、松山、今平周吾に次ぐ日本人3番手の118位。「トップ50に入れば米国の試合にも多く出られる。五輪も選ばれたいので、そのためにもたくさん優勝したい」。理想はツアー初戦からの連戦連勝、望み通りの1勝だった。

アマチュア時代に国内ツアーで優勝し、世界の舞台で戦う金谷は、松山と同じ足跡をたどっている。松山は、今の金谷と同じルーキーだった13年に史上初となるプロ初年度で賞金王に輝いている。金谷も今回の勝利で賞金ランキング3位から一気にトップへと浮上した。「比べられるのはうれしい気持ちと、まだちょっと申し訳ない気持ちもある」と言いつつも、「松山さんがルーキーで賞金王を取ったのはもちろん知っている。今年、良いプレーをして賞金王がとれたらいいなと思います」と意気込んだ。

2日目に出場選手から新型コロナウイルス陽性者が出た影響などで17日の3日目は中止となった。それでも「後悔しないような準備をしよう」と大会開催を信じて宿舎近くの練習場などで調整。部屋に戻っては天気予報から強風でのプレーを入念にイメージしていた。「良い状態で入れた」とすっきり頭を整え、準備を怠らなかった。将来を見据えた大事な1年の始まり。気持ちを緩めることなく先輩・松山の背中を追い、戦っていく。【松尾幸之介】

 

◆金谷拓実(かなや・たくみ)1998年(平10)5月23日、広島県生まれ。5歳からゴルフを始める。15年に17歳51日の史上最年少で日本アマ優勝。同年の日本オープンは11位で、史上最年少でローアマを獲得。19年11月の三井住友VISA太平洋マスターズでアマ4人目のツアー優勝。同8月から約1年間、世界アマチュアランキング1位を維持し、20年度のアマ世界一の称号「マコーマックメダル」を受賞。20年10月2日にプロ転向し、同11月のダンロップ・フェニックスでプロ初優勝。172センチ、75キロ。

 

◆男子ゴルフの東京五輪出場枠 国際ゴルフ連盟(IGF)が発表する21年6月21日時点の世界ランキングを基にした五輪ゴルフランキングで決定する。基本的には各国のランキング上位2人までを選出。五輪ゴルフランキングの上位15位までに入れば最大4人まで出場可能となる。現在、日本人トップは14位の松山英樹で、次いで83位に今平周吾、そして118位に金谷と続く。ランキングに反映されるポイント配分は国内よりも海外ツアーの方が多い。