夢が現実になった。マスターズで松山英樹(29=LEXUS)が日本男子初のメジャー制覇を成し遂げた。

松山にとって念願だった勝利は、日本のスポーツ界にとっても快挙。さまざまな人物、側面から「夢のマスターズ 日本人初V!!」と題した連載で、この偉業に迫る。

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松山のマスターズ優勝は、米国で社会的にも意味があったとの見方が強い。米国出身タレントのパックンことパトリック・ハーランは「反アジア系の暴力事件などが目立ち、特に反アジア感情が高まっている中、最も由緒あるゴルフ大会でアジア人初の優勝。影響力は大きい」。在米ジャーナリストの津山恵子氏は「スポーツでジェンダー差別と人種差別が最も解消されていないゴルフで、アジア生まれの人がマスターズで優勝したことは大きな意味がある」と分析する。

パックンは松山の人柄やプレーに出る“日本人らしさ”が、米国で好感を持たれていると指摘する。「文化の違いはいいな、丁寧だなと評価される。派手なガッツポーズでなく、小規模な喜びの表現もかわいいと思われますよ。コツコツとパーを取り続ける安定したプレーは日本人らしかった。ゴルフに合う清潔感もある。好感度が高いのは間違いない。どう見てもいい人だから炎上商法の攻撃材料も少ない」と指摘した。

津山氏はヤンキースで活躍した松井秀喜氏に重なる部分があるとみている。「松井さんも通訳を使って英語が得意でなかったけど、ホームランも打つし、守備もきちんと仕事をする。手堅く自分の仕事をするところが好感を持たれた。きちんと自分と対話しながら仕事をすることが、日本人の特徴としてあるのでは」。

松山の今後は米国内でどのようにみられているのか。パックンは「ゴルフ好きは知っていますが、イチローや松井といったメジャーリーガーに比べたら、知名度はまだこれから。でも人気急上昇しますよ、絶対。アジア人初のマスターズ優勝はやっぱり違う。他の大会よりはるかに名誉ある大会だから。ゴルフ好きの間でしばらくブームは来ますよ」と予想する。津山氏は「日本では引退後にタレントになるケースがあるなど、人気があるセレブみたいだが、米国社会では、特に4大スポーツとゴルフのプロ選手はすごく尊敬されている。松山さんはPGAツアーに挑戦し続けていけば、尊敬されると思う」と話した。【近藤由美子】