ツアー通算5勝の高山忠洋(43=スターツ)が暫定首位に浮上した。首位と2打差4位から出て、7バーディー、2ボギー、1ダブルボギーの67をマークし、通算7アンダー。賞金シードを17年まで16年連続で保持した実力者が18年7月から右目の病気のため約2年2カ月もツアーを離脱。10年ぶりの復活優勝に手をかけた。“日大同期生”で48歳の片山晋呉と宮本勝昌、浅地洋佑(27)らも同首位。金谷拓実(22)は2打差同7位にいる。

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ベテランの執念がクラブに宿る。後半12番パー4。高山がグリーンカラーからのアプローチを、サンドウエッジ(SW)で8ヤード先のカップに放り込んだ。11番パー4はSWの第2打をバンカーに入れて“目玉”になって、ダブルボギーを喫していた。

「ウエッジに“責任とれよ”と言い聞かせてたんです。まあ、僕の責任なんですけど。あのチップインで流れが悪くなるのを我慢できました」。暫定首位に立つ67につながったバウンスバックは、冗談交じりで振り返るほどうれしかった。

思わぬ病で、18年7月セガサミーカップを最後にツアーを離れた。「中心性漿液(しょうえき)性脈絡網膜症」。右眼球内に水がたまった。「顔を水につけた時に見える感じ。ぼやけて距離感が全然つかめないんです」。デリケートな患部。治療に二の足を踏む医師もいた。同年12月、足を運んだ4軒目の病院で健康保険適用外の手術を受け、症状は劇的に改善されたが、術後約4カ月は運動禁止。「安静にするしかなくて。でも、筋肉は落ちるし」。徐々に体を動かし始め、昨年9月フジサンケイクラシックでツアー復帰した。2年2カ月の歳月を要した。

特別保障制度の適用を受け、シードを継続させるには再来週のダイヤモンドカップまでの3試合で約518万円を稼ぐ必要がある。今大会単独2位なら、ボーダーをクリア。優勝すれば、今季の残り+2年シードを手にできる。

「正直、ここまで追い込まれるとは思わなかったです。でも、もう一度、優勝争いすることを目標に頑張ってきた。久々でどうなるかわかりませんが…狙いたいです」。崖っぷちの43歳が、回復した目に気迫を宿らせた。【加藤裕一】