全米女子オープンを史上最年少で制した笹生優花(19=ICTSI)はなぜ強いのか。そんな疑問を、笹生の出身の東京・代々木高ゴルフ部の吉岡徹治総監督(58)が明確な数値を交えて解説した。「下半身のパワー、バネが飛び抜けている。高校時代に『床反力(ゆかはんりょく)』を測定した時に、驚異的な数値だった。普通は自分の体重の2倍程度なのに笹生は3・5倍。同年代の男子生徒を上回る数値。多くの男子プロゴルファーと同等の数値を、女子高生がたたき出した」と、目を丸くして当時を回想した。

床反力とは両足で地面に伝える力のこと。インパクトの際に踏み込む力と、そこからジャンプするように跳ね上がる力は飛距離などに直結する。事実、今季の国内女子ツアーでドライバー平均飛距離は1位の262ヤード。2位の原英莉花を約4ヤード、10位前後の選手を約15ヤードも引き離している。

19年11月17日、師匠となる「ジャンボ」こと尾崎将司と初対面した際、ドライバーショットを披露した。すると国内男子ツアーで歴代最多の94勝を挙げるレジェンドが、驚きを通り越した表情で目を白黒させたという。「どういう練習をしてきたんだ?」「どうやって、その足腰を手に入れたんだ?」。想像を絶する弾道に、質問が相次いだ。

同じ吉岡氏の教え子でもある男子の石川遼も、初めて笹生のスイングを見た時の衝撃を今も覚えていた。笹生が全米女子オープンで優勝争いする中、4日間のツアーを終えた石川は「代々木高校に入る直前ぐらいに(映像で)スイングを見たことがあって『マジですごい子が出てきたな』という印象だった」と興奮気味に語った。一目でその逸材ぶりが分かったようだ。

吉岡氏はまた、笹生のゴルフIQが高いことも証言した。「英語、タガログ語を短期間で習得したし、純粋に頭がいい。ジュニアをレッスンしたことがあったけど、すごく教え方がうまい。感覚でやっていないから理路整然と説明できる。どこかが力むと、どういう失敗をするというのが分かっている。だから打つ前にイメージができて、判断力も早い」。強靱(きょうじん)な肉体とそれを最大限に生かす頭脳。メジャー制覇も、周囲からしてみれば当然だったのかもしれない。【高田文太】(おわり)