どん底を味わった堀琴音(25=ダイセル)が、逆転で涙の初優勝を飾った。通算2勝で3歳上の姉奈津佳とともに、福嶋晃子、浩子姉妹に次ぐ日本人姉妹2組目のツアー優勝を果たした。

首位と2打差の2位から出て5バーディー、ボギーなしのベストスコア67で回り、通算14アンダー、274。若林舞衣子と並び、初体験のプレーオフ3ホール目で決着をつけた。シード権を失った18年から3年間、レギュラーツアーは予選通過の確率が1割余りだったが、劇的に復活。今大会の優勝で22年シーズンまでのシード権を獲得した。

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笑ったのは一瞬だけだった。ウイニングパットを決め、両手を突き上げて喜んだ直後、堀琴は両手で顔を覆って泣き崩れた。昨年までの3年間で出場したレギュラーツアーは47戦。うち予選通過はわずか6戦で、確率は12・8%と苦しい日々が脳裏をよぎり感極まった。東京からこの日急きょ駆けつけた、姉の堀奈と互いに泣きながら抱き合って喜んだ。「長かったです。優勝がこんなにうれしいなんて。これでやっと『堀姉妹2人とも優勝しました』と胸を張って言えます」。泣きながら笑っていた。

離されても食い下がり、3度追いついた。2打差の首位若林を追って出だしの1番でバーディー発進。3番で並び、1度は離された6番で再び並んだ。この間の3バーディーは2メートル、80センチ、10センチにつけて奪取。ショットの精度は、ホールを重ねるごとに研ぎ澄まされた。その後2打差に開いたが「気持ちで絶対に負けない。勝負どころ」と14、15番で連続バーディー。初体験のプレーオフは「頭が真っ白」。だが胸に手を当て、深呼吸で心を落ち着かせ、夢見た頂点に立った。

14年にプロテストを合格し、翌15年にはシード権を獲得した。15年からの3年間でトップ10は20度もあった。だが近くに見えた初優勝は遠かった。その間に年下が次々と優勝。「ゴルフをやめようと思った。でもやめられない自分がいた。やめるなら挑戦して悔いなく」。トレーニングで6キロ増えた体重は努力の証しだ。

夢がある。「いつか姉妹で優勝争いしたい」。10年前の高校1年時に、姉のプロデビュー戦で訪れた桂GC。10年ぶりに訪れた思い出の地で夢を実現し次の夢が生まれた。【高田文太】

◆堀琴音(ほり・ことね)1996年(平8)3月3日、徳島市生まれ。7歳からゴルフを始める。12、13年ナショナルチーム。14年ABCレディースで、下部ツアーでは2人目のアマチュア優勝。直後にプロテスト合格。翌15年には伊藤園レディースで3位に入るシード権を獲得。16年には国内メジャーの日本女子プロ選手権2位など賞金ランキング11位。17年は9度トップ10入り。だが18年は出場34戦で予選落ち27戦、棄権2戦と低迷しシード権を失った。19、20年はレギュラーツアー計13戦で予選落ち12戦。163センチ、53キロ。

◆女子ゴルフツアーの姉妹優勝 日本人では過去に福嶋晃子、浩子姉妹の1組しかいない。通算で晃子は日米26勝、浩子は国内1勝を挙げている。米ツアーではアニカとシャーロッタのソレンスタム姉妹(スウェーデン)が最初に達成。次に達成したモリヤとアリヤのジュタヌガーン姉妹(タイ)、東京五輪にともに米国代表として出場予定のジェシカとネリーのコルダ姉妹は、現在もトップ選手で計3組が達成している。

<堀琴音の優勝クラブ>▼1W=キャロウェイ EPICスピードDS(シャフト=グラファイトデザイン TOUR AD HD5、硬さS、長さ45・75インチ、ロフト角10・5度)▼3W=同EPICマックス(13・5度)▼5W=ブリヂストン TOUR B X-Fフェアウエーウッド(18度)▼ユーティリティー=同プロトタイプ(3U19度)、同ツアーステージX-DRIVE GR(4U23度、5U25度)▼アイアン=6I~PW=同TOUR B X-CB▼ウエッジ=JUCIE tTウエッジ(51、58度)▼パター=テーラーメイド トラスTB2 トラスセンターパター▼ボール=ブリヂストン TOUR B X