若林舞衣子(33=ヨネックス)が、19年4月の出産後初優勝を飾った。首位に1打差の2位から出て69で回り、通算15アンダー、201で並んだ野沢真央とのプレーオフを2ホール目で制した。昨年6月に産休から復帰。17年3月以来の通算4勝目は、初めて試合会場に連れてきた息子ら家族にささげる優勝となった。

若林が必死に涙をこらえた。優勝インタビューで家族の話を聞かれると一気に目が潤んだ。6月末に72歳で亡くなった母久美子さん、初めてコースに連れてきた2歳の龍之介君、会場で見守った夫と姉、父。それぞれへの思いが浮かんだ。追加の質問をやんわり制すと、笑顔に戻って最後の記念撮影までこなした。

強い気持ちはプレーでも貫いた。首位で迎えた最終18番。「気持ちが入った分、強く打ってしまった」。得意のアプローチでミスが出てボギーとし、2週連続となったプレーオフへ。流れを渡しそうな状況で敗れた先週の経験が生きた。「あとから考えると(勝った)堀さんの気持ちが強かったのかなと思って。今週は同じ思いをしたくなかった」。2ホール目をバーディーとして決着。「張り詰めていた気持ちが解き放たれました」。自然とガッツポーズが出た。

先週大会の第3ラウンド1番から今大会最終ラウンドの13番まで85ホール連続ボギーなし。15年に申ジエが打ち立てた「81」を塗り替えた。「結婚、出産をしてもトップで戦えるんだと思ってもらいたい」と意気込んで戻ったツアーで、しっかりと背中を見せる勝利にもなった。

国内女子ツアーで出産後の勝利は6人目。会見では「試合後は(週明けの)夕飯の献立をいつも考えてます」と母としての一面も見せた。そんな自分を育ててくれた久美子さんへは「本当は生きているうちに見せてあげたかった。天国で喜んでくれていたらうれしいな」。強い母として、これからも戦い続ける。【松尾幸之介】

◆若林舞衣子(わかばやし・まいこ)1988年(昭63)6月9日、新潟・加茂市生まれ。開志学園高2年の05年世界ジュニアで団体、個人(15~17歳)2冠。07年プロテスト合格。16年3月に会社員の佳和さんと結婚、19年4月に長男龍之介くんを出産。165センチ、60キロ。

◆国内女子ツアーでの出産後の優勝 若林は森口祐子、樋口久子、木村敏美、山岡明美、塩谷育代に続く6人目。「ママさんV」は2007年(平19)3月の木村以来。