19年全英覇者の渋野日向子(22=サントリー)が、東京オリンピック(五輪)銀メダリストの稲見萌寧との同組ラウンドで首位と4打差7位発進した。20-21年シーズン8勝で現在最強と言える稲見を「悟りの境地。仏」と例えてプレーをチェック。風雨の中、稲見に1打及ばなかったが、2アンダー、70の好スコアをマークした。

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前半アウトから後半インへ、強さを増す風雨の中で渋野は稲見を“ガン見”していた。「今の稲見萌寧は強すぎる。こんなタイミングで一緒に回れるなら、これはもう見るしかない」と思っていた。

同組ラウンドは7度目。最初は19年8月meijiカップ、全英女子オープン優勝後の凱旋(がいせん)大会だった。現在はスイング改造に取り組み、復活を誓う自分に対し、稲見は東京五輪で銀メダルを手にし、シーズン8勝。立場は完全に逆転した。

生で見る“現在最強プロ”に恐れ入った。悪天候でもボギーを打たず、69にまとめた稲見を「1打に対する考え方に無駄がない。決勝ラウンドはまた違うかもしれないけど、予選だからか本当にリスクの少ないプレーをする」と評した。

「本当にお手本。すごく差を感じた。簡単じゃないのに、簡単に見える。モネにしかできないゴルフ。いつか自分もできたら」-。

極めつけは東京五輪メダリストとしてのメンタルの強さに思うこと。

「あれだけいろんなものを背負ってはね除ける強さが彼女にはある。もうメンタルって言葉は必要ない。う~ん“仏”かな。悟りを開いたような」。

さすがに「あ、仏はおかしいか」と苦笑いで軽く訂正を入れたが、絶賛に次ぐ絶賛だった。

それでも、スコアは1打のビハインドだった。初ボギーの13番パー4は第1打をバンカーに入れて、3番ウッドで軽く地面をたたいた。連続ボギーの14番で3パットした時はぼうぜんとした。うまくいかない自分に時折、感情を出しながらも上がり4ホールで3バーディーを奪い、2アンダーの70と踏ん張った。

「このスコアはほぼまぐれ。ショットも風に影響されたし、明日は風とお友達になりたい」。

今の自分は正直、稲見に及ばない。

しかし、かつてメジャー優勝を先んじたように、いつかは肩を並べる存在になりたい。それに、自分にも稲見のゴルフとはまた違う、自分なりの理想型がある。

「う~ん、もう少し飛ぶようになることかな。風があっても、高い球で距離を出し、高い球でピンを攻める。女子ですごく高い球で勝負できる選手は少ないじゃないですか? 米ツアーにはそういう選手がいて…」。

最強のライバルに刺激を受け、第2ラウンドへ。今は現実を受け入れながら、優勝争いをうかがっていく。【加藤裕一】