世界アマチュアランク1位中島啓太(21=日体大3年)がツアー史上5人目のアマチュア優勝を飾った。最終日は最終組の1組前で1打差4位からスタートし、5バーディー、1ボギーの68をマーク。通算18アンダー、270で並んだ最終組の永野竜太郎(33)とプレーオフに突入し、1ホール目のパーセーブで勝利した。表彰式ではプレー中のポーカーフェースから一転、歓喜の涙を流した。

中島はやはり泣いてしまった。18番プレーオフ1ホール目、6番アイアンでピン右前4メートルに完璧なショットを決めた時も、50センチのウイニングパットを沈めた時もガッツポーズすら見せず、ポーカーフェースを貫いた。しかし、表彰式が始まるとダメだった。

「すぐ泣いちゃうんです、勝っても負けても」。昨年、目標の先輩・金谷拓実のプロ転向を運転中の車内で知って泣いた。4月に松山英樹がマスターズで勝った時は、東建ホームメイト杯を前に泊まっていたホテルで泣いた。でも、自分のことでうれし涙を流したのはいつ以来か。「悔し涙ばかりだった。やっとうれし泣きできました」。18年アジア大会団体・個人で金メダルを手にして以来の歓喜に酔いしれた。

道半ばの快挙だ。「優勝を全く考えない。ドライバーを毎日(パー3を除く)14ホールで持つ。大会中、毎日トレーニングする」。大会前、ナショナルチームのガレス・ジョーンズ・ヘッドコーチとの話し合いで、自ら提案したことを貫いた。フェアウエーが狭く、高低差もある城陽CCであえてリスクを冒す。普段2日に1度のトレーニングを増やし、筋肉痛に耐えてプレーする。「自分に向き合って、最後までドライバーを握ることができた」。この日は優勝優先なら「ドライバーを使わない」という15、16番でフェアウエーをキープ。5バーディー、1ボギーの68につなげた。日本ツアーの15年賞金王・金庚泰をまね、淡々とプレーするスタイルで4日間を戦い抜いた。

真のターゲットは、先にある。11月3日開幕のアジア・パシフィック選手権(UAE)。かつて松山、金谷が優勝し、マスターズ出場を勝ち取った。自分も-。シビれる場面でも恐れず攻められる自分を作るため、今大会で試し、優勝という最高の結果を得た。

夢は単純で大きい。「自分は世界各地でプレーして、どこでも応援されるプロになりたいんです」。もちろんメジャーに勝ちたい。特に世界最古の全英オープンへの憧れは強いが、そこがゴールではない。日本ゴルフ界から次に世界に打って出るホープが、確かなステップを刻んだ。【加藤裕一】