代名詞の笑顔に涙を加えて、強いしぶこが帰ってきた! 渋野日向子(22=サントリー)がプレーオフの末に逆転で、19年11月の大王製紙エリエール・レディース以来、約2年、686日ぶりの復活優勝を果たした。正規の18ホールは首位と2打差の5位から出て、6バーディー、2ボギーの68。通算10アンダー、206。木村彩子、佐藤心結、ペ・ソンウ(韓国)とのプレーオフを2ホール目で制した。オフのスイング改造への批判も「見返したい」との反骨精神で、日米通算6勝目を挙げた。

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優勝の瞬間、渋野は両手で顔を覆った。1人が脱落し、3人でのプレーオフ2ホール目。佐藤、さらにペがバーディーパットを外し、バーディーとしていた渋野が優勝。苦しんだ約2年が脳裏をよぎり、大粒の涙が流れた。「(日米で5勝した)2019年の自分を超えることは難しいんじゃないかと思っていたけど、ここ最近の自分なら、2019年の自分を超えられるんじゃないかと、ちょっとずつ自信を持てるようになってきて。勝ちたい欲を抑え、1打1打に向き合ってやってきたかいがあった。勝てるとは思わなくて、ウソなんじゃないかなと思って涙が出てしまいました」。目を真っ赤にしながら笑っていた。

スタート時点の首位との2打差は、後半に入った10番をボギーとした時点で4打差に広がった。だが直後の11番をバーディーとし、19年の代名詞の1つ、バウンスバックに成功。「まだいけると思って、そこからギアを入れた」。残る7ホールで3つ伸ばすチャージ。後がない18番パー5は第3打を1メートルにつけて伸ばした。プレーオフ1ホール目は同じ18番の第3打を、残り88ヤードから10センチにつけるスーパーショット。チップインイーグル寸前だった。

怖いもの知らずで賞金女王争いも2位だった19年のような攻める気持ちが戻った。加えて、昨オフから取り組み始めたスイング改造の成果も出た。ウエッジ4本態勢で100ヤード以内の精度を上げる取り組み。再現性、安定感を求め、練習でウエッジを6、7本も壊すほど練習。だがコンパクトな振り、落ちた飛距離、何より勝てずにゴルフファンからも批判された。「いやでもそういう声は耳にする。でも『あーじゃ、こうじゃ』と言っていた人を見返したかった」。スイングが定着した今、飛距離も戻った。「前の自分も捨てず、新たなものを取り入れた形」。ようやく結果に表れた。

もう勝てないかもしれない-。そんな思いがないわけはなかった。「女子ゴルフ界は本当に世代交代が早い。今年は『予選通過できれば』と思うぐらい弱気だった。でもいつか勝てる日を夢見て…」。夢はかなった。「こんな、ろくでもない私を応援してくれる人がまだ多くて、いろいろ悩んでいた自分が情けない」。信じた道は正しかった。心も吹っ切れた。迷いのなくなった渋野の完全復活は、もう間近だ。【高田文太】

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