プロ8年目の堀川未来夢(28=Wave Energy)が通算19アンダー、269で19年6月日本ツアー選手権以来2年5カ月ぶりのツアー通算2勝目を挙げた。この日は67。約2年間苦しんできたパットのイップスを抱えながら、完全優勝を飾った。賞金ランク1位C・キム、同2位木下稜介、同3位金谷拓実らによる賞金王争いは最終戦日本シリーズJT杯(12月2日開幕、東京よみうりCC)に持ち越された。

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最終18番パー5で2オン成功後、30センチの優勝パットを沈めて、堀川が両手を大きく突き上げた。「長かったな、と思う。初優勝からの2年半も、今日1日も本当に長かったです」。前半アウトを32で駆け抜け、後続に4打差つけた。しかし、インは2バーディー、1ボギーの35。顔を出した“病気”を封じ込め、歓喜のゴールを迎えた。

ツアー初優勝を飾った19年後半、パットで右手の動きがおかしくなるイップス症状に見舞われた。「強みと思っていた」という武器が弱点になった。逆転の発想が活路となった。翌年には練習でも症状が出始めたが、狙い通りだった。

「練習で出ず、本番で出て、また練習で出ずじゃ対策のしようがない」。本番のルーティンを練習に持ち込み、発症させた。「ずっと症状が出るなら、いろいろ試せる。もう勝ったようなもんです」。上り、下り、フック、スライス。考え得るライン全部で傾向を見極め、対策を編みだした。

この日は後半15番、上り6メートルのバーディーパットを打った瞬間「うわっ出た」と感じた。左に引っかける。「企業秘密」と詳しくは話さないが「左右の手のグリップの力感を変えるとか。左右5対5を、8対2とかに」。常に3つほどある処方箋の引き出しを開け、窮地を乗り切った。

28歳で2年5カ月ぶりのツアー優勝を飾った。「前回は自分を若手と思っていた。今は後輩感覚よりさらに下の世代が出てきた。負けたくないです」。対抗心を支えるのは「熱量」だ。「年をとれば、どうしても下がりがちですけど、今は“イップスをどうにかしたい”という熱量が上がってる」。自分の大敵すらもプラスに解釈。「来年は賞金王目指して頑張りたい」と宣言した。【加藤裕一】

<堀川未来夢のクラブ>

▼1W=ブリヂストン ツアーB 18XD-3プロト(ロフト角9・5度、シャフト=グラファイトデザイン ツアーAD PT-7、硬さX)▼FW=テーラーメイド M4(3W15度、5W18度)ブリヂストン ツアーB 19JGR(7W21度)▼ユーティリティー=同 J15ハイブリッド プロト(23度)▼アイアン=同 ツアーB 18X-CB(5I~PW)▼ウエッジ=同 ツアーB XW-F(52、58度)▼パター=タイトリスト スコッティキャメロン フォー・ツアー・ユース・オンリー TF8 2▼ボール=ブリヂストン ツアーBX