谷原秀人(43=国際スポーツ振興協会)が、知恵と経験を生かしたベテランの技で、今季2勝目、通算16勝目を挙げた。2位と1打差の首位から出て、3バーディー、2ボギーの69で回り、通算12アンダー、268。昨年は最終日にボギーとし、1打差で2位に敗れた苦い思い出のある難関18番パー3で、あえてグリーンを狙わない作戦が奏功した。鬼門をパーで切り抜ける頭脳と、要所でパットを決める勝負強さで3年シードを手にした。チャン・キム(31=米国)が逃げ切りで初の賞金王に輝いた。

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観衆のため息の中で、谷原は勝利を確信した。18番パー3。谷原のティーショットは、グリーン手前のラフに入った。ミスショットのようにも映るが、谷原は「絶対に乗せないと決めていた」と、グリーンを狙っていなかった。ラフからピン手前に第2打をつけ、しっかりとパーセーブ。2位と2打差を守り、3週間前に続く今季2勝目に右手を握り、喜びをかみしめた。

1打差で敗れた苦い経験が生きた。昨年、パーならプレーオフだった最終日の18番はグリーンを狙ってボギー。プロでもボギー、ダブルボギーは当たり前という名物ホールのワナにはまった。鋭い傾斜のグリーンに勢いよく着弾すれば、難しい位置にこぼれたり、難しい下りのパットが残る。一方で良い位置にティーショットがつけば、バーディーの可能性もあるパー3。昨年から一転「最初から届かないクラブを持っていた。狙い通り」と、勝負に徹したパー狙いで雪辱した。

首位から出たが、ほとんどの時間は同じ最終組の池村に次ぐ2位だった。「チップインは決めるし、池村の流れだった」。それでも「焦りはなかった」と耐えた。13、16番で立て続けに8メートルのパットを決めて伸ばした。取り戻した流れは離さない。通算16勝目は3週間前に続く40代で2勝目。「まだまだ若い選手に立ち向かえる自信が出てきた」と堂々と胸を張った。

まだ夢の途中だ。「また海外に挑戦したい」。欧米など海外ツアーに挑み続けた大志は消えていない。さらに「藤田(寛之)さんが40代で12勝。そういう先輩を目指したい」と続けた。永遠のゴルフ少年の成長は止まらない。【高田文太】