青木瀬令奈(29=フリー)が、ツアー通算3勝目を挙げた。逃げ切り優勝は初。6バーディー、3ボギーで4日連続60台となる69。3つ伸ばし、菊地絵理香ら2位との差を2打に広げ、通算14アンダー、274で大会コース記録を2打更新した。若手が強さを発揮する中、来年2月に30歳を迎えるが、強さは増すばかり。優勝賞金2160万円を加え、生涯獲得賞金は3億円を超えた。同10億円超えで、憧れの不動裕理に近づくことを目標に掲げた。

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両手を伸ばし、曇り空とは対照的に晴れやかに笑った。10センチにも満たないウイニングパットを決め、青木が大会コース記録で逃げ切った。過去2勝はいずれも最終日の逆転。「3日目でトップに立って、勝ち切るというスタイルをやってみたかった。それでこそ精神的に強い選手。甘さを捨てて勝ち取った1勝。今までとは大きく違う1勝」とかみしめた。

出だしは2連続ボギーとつまずき、4位に後退。だが3、4番の連続バーディーで再び単独首位に立った。後半は、驚異的な4日連続となる3連続バーディーも飛び出した。10番パー4は15ヤードからチップイン、11番パー3はティーショットを30センチに、12番パー4は7メートルのパットを沈めた。ドライバー平均飛距離222・63ヤードはツアー94位。それでも年間ポイント争いで4位という多彩な技がさえる青木らしい伸ばし方だった。

見えない敵と戦った。前日の第3ラウンドも、首位に立った後、仮想の強敵を追い掛けて戦ったと告白。この日はキャディーも務める大西コーチの助言で、途中はリーダーボードを見ずに戦った。18番を迎えても「首位に並んでいるのか? どうだろう」と2打差の首位の実感がないまま。だからこそ「最後の最後まで攻撃の手を緩めなかった」。18番も安全策は取らず3メートルのチャンスにつけた。

3勝目で生涯獲得賞金は3億1565万3908円となった。小学生のころ、歴代トップで同13億円超の不動裕理を見て「10億円稼げる選手になりたい」と、憧れた。その夢は今も変わらず「不動さんへの第1歩」と、通過点を強調した。

今季の年間女王争いの1位西郷、2位山下は来年2月に30歳になる青木よりも9歳下。01年度生まれ。それでも5年前のツアー初優勝と比較し「すごく成長した。当時の私なら、3日目にトップに立っても優勝しきれなかったと思う。今は覚悟を決められる」。精神面の成長を口にする。2勝目を挙げた1年前の大会中から毎日欠かさず「ざんげノート」に反省を記し、ゲームや漫画を封印。「勝ちにこだわってきた1年。1度もない(シーズン)複数回優勝を目指したい」。本当の円熟期はこれからだ。【高田文太】

◆青木瀬令奈(あおき・せれな)1993年(平5)2月8日、前橋市生まれ。名前は、両親が音楽家で「セレナーデ」から。前橋商高卒業後、11年にプロテスト合格。19年4月から1年間、日刊スポーツで紙上レッスン「青木瀬令奈のせれにゃん塾」で塾長。153センチ。

<せれにゃん過去2勝>

◆17年ヨネックス・レディース 雷雲接近のため第1日が中止となり、36ホールの短縮競技として行われた。最終日に首位と4打差の13位からスタート。6バーディー、ノーボギー、通算4アンダーで、デビューから7年かかってツアー初優勝。

◆21年宮里藍サントリー・レディース 最終日に首位稲見萌寧と4打差の2位でスタートし、5バーディー、ノーボギーの67をマーク。稲見に逆転勝ち。