今季メジャー最終戦で、渋野日向子(23=サントリー)の逆襲が始まった。おはよう3連続バーディーを皮切りに8バーディー、2ボギーの6アンダー、65をマーク。ホールアウト時点で首位に立った。男子の全英開催16回、女子の全英初開催となった名門リンクスを「風と友だちになる」と念じて克服。5月以降は日米出場8戦中、予選落ち6回、棄権1回だったが、19年にシンデレラストーリーを描いた大会で力強い1歩を踏み出した。

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上がった時点で単独首位だ。渋野は「自分が自分でないくらいパットが入ってくれた。風の中だったけど、ショットは距離感が合っていて、自分でも不思議で…」と気恥ずかしそうに話した。

100%の手応えがあるわけではないが光は見えている。「平らなライはほとんどなくて。でも、怖がらずにしっかり振り切れていたと思う。(ドライバーが飛んでいたのは)よお転がってくれたかな」と笑い「1日で6個の“猶予”をいただいたというか。明日はそれを減らさないように頑張ります」と喜んだ。

早朝のスタート時に降っていた雨が上がり、青空が広がり、スコアを伸ばした。1番で8メートルの下りスライスラインを流し込み、2番は3メートル、曲がりの大きいフックラインをジャストタッチで沈めた。3番パー4は第2打をピン前20センチ、お先に入れた。おはよう3連続バーディーだ。4番で3パットのボギーをたたいたが、5番パー5を2オン2パットでバウンスバック。9番は2メートルを決めた。

インは1バーディー、1ボギーで迎えた16番パー3で、ピン右60センチにつけるスーパーショット。17番もバーディーを奪った。

青空でも気温15度前後、強い風が吹く。2週前のエビアン選手権から投入したマレット型のパターがさえたが、リンクスらしい天気で出した快スコアは、好調なショットが支えた。「風と友だちになる」-。公式会見での言葉を実践した。

どん底からはい上がる。

「全部全部。すべてに自信がない。自信を持てるようにしたい」。そうこぼしたのは7月22日、予選落ちしたエビアン選手権の第2R後。初日に111位と出遅れ、131選手中126位に終わった。ショット、アプローチ、パットと全部がダメだった。

5月1日最終日のパロスバーデス選手権から日米出場8戦で予選落ちが6回。6月の全米女子プロは予選通過しながら、3R前に体調不良で棄権する異例の事態もあった。

絶不調で迎えた大会前の公式会見ではコースの印象を問われると「むずい。難しい。風がすごいですし。全部難しいですね」。予想優勝スコアを問われると「LPGA(米ツアー)にいる選手たちって、レベルがやっぱり違い過ぎるので。普通に2桁(アンダー)いく選手がいるんじゃないのかなと。私ではない」。ネガティブな発言がほとんどだった。

それでも、全英は特別だ。「他の試合とは違う感情ではあるなと思います」。前週のスコットランド女子オープンで予選落ち、本来最終日の日曜日にコース入りした。歴代優勝者のパネルが飾られていた。

「駐車場へ入る時に看板が手前から3番目にある。それでまず違うじゃないですか。他の試合だと絶対そういうことがないので。(写真は)下を向いているヤツ。いつの写真? みたいなのでそれで笑けるし。1年間通して、この試合だけチャンピオンは駐車場があるんです。それがすごくうれしくて」。特別な大会が、渋野に力を与えている。

【スコア速報】AIG全英女子オープン第1日