岩井千怜(ちさと、20=Honda)が、88年のツアー制施行後、史上3人目となる初優勝からの2週連続優勝を達成した。2位に2打差の首位から出て2バーディー、ボギーなしの70と2つ伸ばし、通算13アンダー、203。終盤17番のバーディーで、並んでいた山下美夢有を1打差2位に退けた。前週は姉明愛との双子姉妹プロ、02年度生まれとして初優勝。その翌週に2勝目を挙げたのは90年西田智慧子、05年表純子以来で、最年少の20歳47日で成し遂げた。次週は史上3人目、初優勝からは初の3週連続Vに挑む。

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決めれば優勝、外せばプレーオフ、さらには2位転落の可能性もあった。最終18番パー5のグリーン上。静寂が緊張感を高める中、岩井千は構えた直後にパーパットを打った。1・5メートル先のカップに吸い込まれると、大歓声に包まれた。右手を突き上げ、体をのけぞらせて喜びを爆発させた。初優勝した前週のような涙はない。持ち前の笑顔が止まらなかった。「迷わず決めたところに打つと決めて打ち切った。信じられない。驚きの気持ち」。ツアー本格参戦1年目らしからぬ強心臓で、史上3人目の快挙を歴代最年少で達成した。

18番のパーパットは前週外した時と、ほぼ同じ距離だった。前週は2位と2打差あったため、ボギー締めとなったが逃げ切った。今大会は先に上がっていた2位山下と1打差。「緊張感はあった。でも、いい緊張感だったので集中できた。1度経験していることなので、先週よりは安心感があった」。前週は震える手で打ったパットを落ち着いて決めた。初優勝の経験が、一回り成長させていた。

3番パー3で3メートルのパットを決め、最初のバーディーを奪った。だが2つ目が遠く、その後は13ホール連続でパー。それでも「スタート前から、周りがバーディーを取っても焦らず、チャンスを待とうと思っていた」と、我慢の展開は想定内。緊張感が増したと自覚した16番では、鼻歌を歌って落ち着きを取り戻した。そして17番パー3で2つ目のバーディー。リーダーボードを見なかった前週と違い、13番時点で山下と並走していると確認済み。自然と右手を握り締めていた。

初優勝では心残りがあった。大好きな母方の祖母本吉愛子さん(79)に優勝を見せられなかったことだった。足腰が悪く、長野県内での前週の試合は訪れていなかったが、神奈川県在住で、今大会は伯父秀司さん(52)とともに最終日を4カ月ぶりに観戦。「元気なうちに優勝をプレゼントしてあげたい」と、前週よりも優勝を意識する中で勝ちきる、勝負強さも光った。

前週は優勝した翌朝、17歳の馬場咲希が日本人37年ぶり2人目の全米女子アマ優勝を飾り「私の優勝が薄れちゃった」と大会前に話していた。この日は「馬場さんも世界で活躍して、私も頑張ろうという気持ちだった」と明かした。次戦は史上初の初優勝からの3週連続優勝に挑む。初優勝からという条件を除いても、史上2人しか達成していない偉業。「いいゴルフができている。来週も調子をキープしたい」。自信を深める20歳の勢いは、止まりそうにない。【高田文太】

▽父雄士さんをキャディーに33位だった岩井明 (岩井千の2連勝は)率直に、すごいうれしい気持ちだけど、時間がたつにつれて、自分も負けていられないという気持ちが出てくると思う。千怜が優勝して、自分も優勝できるという目標をくれた。シード権を狙いつつ、チャンスが来たら勝ちたいという気持ちはある。

◆岩井千が達成した記録 ツアー初優勝翌週に2勝目を挙げたのは、2勝目が24歳32日だった90年の西田智慧子、31歳165日だった05年の表純子に続き、88年のツアー制施行後、史上3人目で、最年少20歳47日での達成。2週連続優勝は、17年の畑岡奈紗の18歳261日、04年に2度達成した宮里藍の19歳1日と、19歳337日に次ぐ、4番目の年少記録。次戦のニトリ・レディース(25~28日、北海道・小樽CC)では、前例のない初優勝からの3週連続優勝に挑む。初優勝からの条件を除く3週連続優勝は、07年の全美貞(韓国)と19年の鈴木愛の2人が達成している。

◆岩井千怜(いわい・ちさと)2002年(平14)7月5日、埼玉県生まれ。8歳から双子の姉明愛とともにゴルフを始める。埼玉栄高では姉とともに、全国高校選手権特別大会団体優勝。個人では埼玉県女子アマ3連覇。昨年6月のプロテストで、史上3組目の双子姉妹での同時合格。同年9月、下部のステップアップツアー、カストロール・レディースで優勝。同ツアーの次戦で姉も優勝し、レギュラーツアーを含め、史上初の姉妹による2戦連続優勝。前週のNEC軽井沢72でレギュラーツアー初優勝。162センチ、59キロ。

○手ねメジャー初出場で13位となったAIG全英女子オープンから、国内ツアーに復帰戦した山下美夢有(21=加賀電子)が、猛チャージで2位に入った。首位と7打差の13位から出て、1イーグル、6バーディー、ボギーなしの64で、通算12アンダー。岩井千と並んでホールアウトすると、プレーオフに備え、待機した。1打及ばず、「もう1つは取っておかないと。もったいなかった」。伸ばしたいパー5の2ホールを含む、15番からの4ホールを全てパーで終えていた。

1番パー5で、残り38ヤードからチップインイーグルを奪って最高のスタートを切った。12番からの3連続バーディーで首位に並んだ。最終日の「64」は大会コース記録を1打更新。全英でも優勝争いに加わった実力を存分に発揮した。「コースレコードは自信になった。次もしっかりと上位で戦いたい」と、今季3勝目へと切り替えた。