あの村神様を彷彿させる“ニューフェース”が飛び出した。首位から1打差の3位で出た細野勇策(20=ロピア)が11バーディー、1ボギーで大会コース新の61をマークし、通算16アンダーでトップを独走。ツアー本格参戦1年目、プロ野球ヤクルトの村上宗隆にルックスが似ていると評判のホープが、ツアー開幕戦から存在感を発揮した。

4打差の2位に今平周吾。石川遼は7打差の5位で決勝ラウンドに進んだ。

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全体1組目、朝7時10分にラウンドを回り始めた細野が、ぐんぐんスコアを伸ばした。国内ゴルフでは珍しい左利き。1番パー4でいきなりチップインバーディーを挙げ「普通のバーディー以上に大きかった」。これで勢いに乗ると、2番パー4では約1・5メートルのパットを沈めて連続バーディー。その後もショットとパットがかみ合った。13番パー3でもチップインバーディーを記録するなど、後半には3連続バーディーを2回。11バーディーは大会記録に並んだ。

この日のスコア61は大会コース記録を1打更新し、大会記録タイ。「淡々と1ホール、1ホールをこなしていった。終わってみたら、すごいことになっていた」。本人も驚く快記録だ。

野球観戦好きで、好きな選手はヤクルトの村上宗隆。「かわいい顔で格好いいプレーをする。勝負強さに憧れる」。その“村神様”にルックスが似ていないかと尋ねられると「よく言われます。WBCの時、特に言われました」と目尻を下げた。

長いシーズンを戦い抜くため、昨年12月から増量に挑戦。「限界になったところから、さらにいっぱい食べるようにした」。もともと食は細かったが、食事の量と回数を増やしたことで、短期間で6、7キロほど体重が増加。前夜の食事メニューは「ココイチのあさりカレー800グラムに、チーズトッピング」と明かす。この日のラウンドの合間には、母洋子さん(54)が握ってくれた昆布やめんたいこの具が入ったおむすびを頬張りパワーを補充した。

生まれて間もなく心室中隔欠損症と心房中隔欠損症が見つかり、生後2カ月で手術を経験。医師から激しい運動を避けるよう言われた中で、幼少期に始めたのがゴルフだった。20歳のプロゴルファーとなった今、もりもり食べて、どんどん大きくなっている。【奥岡幹浩】

◆細野勇策(ほその・ゆうさく)2003年(平15)1月9日、山口県山陽小野田市生まれ。左利き。心臓の持病のため生後2カ月で手術を受ける。幼少期にゴルフを始めたきっかけは、激しい運動ができなかったため。小学校6年時に全国大会優勝。中学3年の17年には山口県アマを制した。好きな食べ物は「肉とご飯」。身長177センチ。

 

〇…この日5つスコアを伸ばした今平は、連続バーディーのあとイーグルを奪うなど抜群の滑り出しを見せた。後半は1バーディーにとどまったものの、「調子は良かった。昨日に引き続きショットが良く、組み立てやすかった」と手応えを口にした。通算12アンダーで首位と4打差の2位。「いい位置にいる。1日1日、アンダーパーを重ねていきたい」。逆転優勝へ意欲を示した。

〇…石川は後半にスコアを5つ伸ばした。12番パー5は第1打が大きく外れたが、「奇跡が起きた」と表現するショットでリカバリーし、バーディーに結びつけた。通算9アンダーで首位と7打差の5位につけ、「予想していなかった。良い方に上振れした。『狙っていました』と言えば格好良いんだったけれど」と笑った。週末に向けて、「しっかり地に足を付けたい」と気持ちを引き締め直した。