原英莉花(24=NIPPON EXPRESSホールディングス)が国内メジャーで復活を果たした。1打差の首位で出て1イーグル、3バーディー、1ボギーの68をマーク。菊地絵理香との“エリカ”対決を3打差で制し、通算15アンダーの273で3年ぶり2度目の優勝を飾った。ツアー通算5勝目で、うち国内メジャーは3勝。国内最高峰の大会で強さを発揮してきた女王がその座に返り咲いた。
◇ ◇ ◇
海に面したコースに大歓声が響いた。原が初制覇した3年前は新型コロナウイルス禍で無観客。この日は9000人超を集めたコースで大観衆を引き連れ、喝采を浴びた。「たくさんの方から応援をいただいた。自分は幸せ」。右手を高々と突き上げて喜んだ。
同じエリカの菊地に隙を見せなかった。前日に続き、2人1組での最終組。持ち前の飛距離で、追い上げを許さない。打ち下ろしの5番パー5は1打目を310ヤード近くも飛ばし、残り234ヤードの2打目をピン左5メートルへ乗せた。イーグルパットを沈めると、復活へ勢いに乗った。7番パー3では6メートルのバーディーパットでリードを広げた。「引き締まった気持ちでプレーできた。集中力が半端じゃなかったと思う」。前日にはロングパットを面白いように決めるなど、この日もパッティングがさえた。「順回転で打つことができていたし、読んでいたラインとマッチした」。
ツアー勝利は一昨年11月以来。20年には今大会を含め国内メジャー2勝を挙げた。しかし21年は国内ツアー1勝にとどまり、22年は未勝利。「去年の夏場からは、シード権を取れないのではと思いながら戦っていた」。会見中には、当時の心境を思い出して涙ぐんだ。腰痛の影響から「短い選手生命なのかな」と思い詰めたこともある。今年5月に手術に臨む直前には「本当にゴルフができるのかという状況だった」と振り返る。苦境を乗り越え「常に何事も前向きに捉えられるようになった。そういう気持ちでプレーできたことが、この優勝につながった」。人間的にも大きくなった。
今季使用のゴルフボールには「readiness」という文字を刻む。「覚悟」の意味を持つ言葉を選んだのはシーズン前。「自分ができることに前向きに挑戦し、強い気持ちで戦い抜く」という思いを込めた。8月に復帰後8戦目。その気持ちを結果で示した。
“勝負服”も一新した。これまでの勝負カラーはネイビーと白だったが、この日は黒を選択。「過去のことはもういい。新しく何かテンションが上がるウエアでいこう」。過去と決別し、新たな自分の色で戦った。
今後は来季の米ツアー出場権をかけた2次予選会(17日~、米フロリダ州)にも出場予定。久々に手にした国内ビッグタイトルを弾みに、海外でさらに大きく羽ばたく。【奥岡幹浩】
◆女子ゴルフの国内メジャー レギュラーツアーで最高位にあたる大会。最も歴史があるのは68年7月からの日本女子プロ。同年12月に日本女子オープンも行われ、79年まではこの2大会のみ。80年にレディーボーデン杯(現ツアー選手権)が昇格し3大会に。08年ワールドレディース(現ワールド・サロンパス・カップ)が昇格し、現在は年4大会。
◆原英莉花 はら・えりか。1999年(平11)2月15日、横浜市生まれ。10歳でゴルフを始め、湘南学院高から尾崎将司に師事。19年6月のリゾートトラスト・レディースでツアー初優勝。21年に大王製紙エリエール・レディースを制した。173センチ、58キロ。