<女子ゴルフ:サマンサタバサレディース>◇最終日◇22日◇茨城・イーグルポイントGC(6535ヤード、パー72)◇賞金総額6000万円、優勝賞金1080万円

 プロ5年目の木戸愛(22=ゼンリン)が5バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの70で回り、通算14アンダー202でツアー初優勝を飾った。

 木戸の父で元プロレスラーの修さん(62)は、愛する長女のウイニングパットを、何重もの人垣の間からひっそりと見守った。「私は涙もろいもんですから、あまり表には出たくないんですよね」。勝利者インタビュー、表彰式の間も、ギャラリー駐車場へ乗用車を取りに行くと言い残し、姿を消していた。木戸の「優勝してお父さんが泣くところを見たい」という願いがかなったかどうかは、修さん本人しか知らない。

 最終ラウンド直前、娘には「いいイメージを持ってがんばり続けていれば、必ずいいことが待っているから」と電話で最後のエールを送っていた。「私もそう思ってやっているから」と修さん。ライバルの藤波辰爾に先行されても、決して「いぶし銀」と言われる技巧派のファイトスタイルを崩さず、地道に実績と人気を積み上げたからこそのアドバイスだった。

 木戸が小学生のころは、一緒にスクワットをするなど、トレーニングの指導も行っていたという。「小さいころだけですよ(笑い)。私はゴルフをやるよりも、愛と妹の侑来が2人でやっているのを見るのが好きなんです」。侑来も24日からプロテストに挑戦する。かつてカール・ゴッチに、血がにじむような特訓で鍛えられた男が、愛とやさしさで娘2人を大きく育て上げた。

 ◆主な父娘スポーツペア

 日本女子プロゴルフ界では元プロ野球選手が父のプロが多い。ツアー通算24勝の福嶋晃子、ツアー参戦中の浩子の父久晃氏は大洋、広島の元捕手。賞金シードを2度取った東尾理子の父修氏は元西武投手。昨年プロテスト合格の工藤遥加の父公康氏は元西武投手。ただし「父が著名なスポーツ選手」でツアー優勝したケースは、福嶋晃に次いで木戸が2人目になる。

 男子では杉原輝雄氏の長男敏一が、91年関西オープンでツアー優勝を果たした。他競技の“父娘鷹”では浜口父娘、三宅父娘が有名。元プロレスラー・アニマル浜口氏の娘京子は、アテネ&北京五輪女子レスリング72キロ級銅メダリスト。メキシコ五輪重量挙げフェザー級銅メダリスト三宅義行氏の娘宏実は重量挙げ48キロ級で、今夏に五輪3大会連続出場を果たす。