プロゴルファー転向2戦目でツアー優勝した“怪物”松山英樹(21=東北福祉大)が、衣料品大手「ユニクロ」から契約オファーを受けていることが、13日までに明らかになった。所属も視野に入れたウエア契約に向け、すでに水面下で獲得の意向を伝えられた。男子テニスの錦織圭(23)や、今季マスターズ覇者のアダム・スコット(32)らに続くグローバルブランド化の「旗印」として、日本ゴルフ界の超新星に白羽の矢が立った。

 松山のもとに、日本を代表するブランドからオファーが届いた。4月、契約直後のアダム・スコットがマスターズで優勝。ユニクロは、ポロシャツの胸のブランドロゴで話題をさらったが、その時にはすでに次の「仕掛け」を始めていた。マスターズ最優秀アマや国内ツアー、三井住友VISA太平洋マスターズ優勝など、例を見ないアマ時代の実績をひっさげてプロ転向した松山に対し、いち早く契約の意向を伝えたのだ。

 異例のオファーだ。ゴルフ界に限らず、こうした大型の契約は、選手を売り込むマネジメント事務所や広告代理店と、スポンサー企業の間で話が進められる。しかし松山はプロ転向直後で、まだマネジメント事務所と契約をしていない。いわば「窓口」がない状況だが、契約を熱望するユニクロは、自ら動いて本人サイドに打診した。

 その後松山は、つるやオープンでプロ転向2戦目という最短記録でツアー優勝。3戦目の中日クラウンズでも優勝争いの末に2位となり、賞金ランクで早くも首位に立った。熱烈オファーを出す価値がある選手だということが、あらためて結果で証明された。

 ナイキのタイガー・ウッズや、キャロウェイの石川遼ら、大半のプロゴルファーはクラブメーカーと総合契約を結び、ウエアも同じメーカーのものを着る。ウエア契約を別個にするためには、契約クラブメーカーとの折衝が必要になる。

 プロ転向後もサポートを続ける東北福祉大ゴルフ部の阿部靖彦監督も「今はクラブの契約先を決めることが第一。いろいろな企業さんから、いい話はたくさんいただいているけど、スポンサーを決めるのはクラブが決まってから」と話す。

 契約が決まるまで、ハードルは多く、時間も必要。それでも双方にとって、魅力的な契約であることに間違いはない。欧米やアジアに積極的に進出し、グローバルブランド化を目指すユニクロは、世界で活躍するスポーツ選手を起用しイメージ周知をはかっている。テニスの錦織同様、世界での活躍が期待される松山は、うってつけの人材だ。

 派手な発言はせず、結果で語るタイプの松山は、シンプルで機能的なユニクロの商品イメージにも合致する。錦織とユニクロは推定5年10億円、プラス4大大会制覇などで数億円のボーナスという、超大型の契約を結ぶ。国内でプレーし、錦織よりも露出度が高い松山の契約は、さらに大きなものになる可能性もある。

 テニスのジョコビッチは世界ランク1位。スコットはマスターズ優勝。錦織も9日に世界2位のフェデラーに勝利し、世界を驚かせた。ユニクロとの契約は、松山にとっても世界への扉になるかもしれない。

 ◆株式会社ユニクロ(UNIQLO)

 1949年(昭24)3月、山口県宇部市で「メンズショップ

 小郡商事」として創業。84年にユニクロ第1号店を広島市に出店し、中国地方を中心に店舗を拡大する。91年に小郡商事から「ファーストリテイリング」に社名変更し、90年代後半のフリースの大ヒットなど、低価格大量販売戦略で成長する。05年からファーストリテイリングの完全子会社として現社名に。店舗数は11年8月末現在で843店。本社は山口県山口市で、東京・港区赤坂に東京本部を置く。

 ◆ユニクロの契約選手

 選手との個人契約第1号は09年8月の車いすテニスの国枝慎吾(29)。パラリンピック3大会連続金メダル獲得の世界的選手とは所属契約を結んでいる。11年1月にはテニスの錦織圭(23)とスポンサー契約、さらに12年5月にはテニスのノバク・ジョコビッチ(25)と「グローバル・ブランド・アンバサダー」契約を締結した。ウエア提供だけでなく、共同で社会貢献活動にも取り組む新しい契約で、今年4月にはゴルフのアダム・スコット(32)とも同様の契約を結んでいる。