アーティスティックスイミング(AS)の「ジャパンオープン2019」が4月27〜29日、東京辰己国際水泳場で開催される。FINA(国際水連)ワールドシリーズになって3年目。今年から午前は「第95回日本選手権」、午後はジャパンオープンと2大会を分けて行うことになった。マーメイドジャパンは、20年東京五輪を見据えて、デュエットのテクニカルルーティン(TR)チームのフリールーティン(FR)など新ルーティンを投入。7月の世界選手権韓国大会での表彰台返り咲きに向けて、世界にアピールする。

東京五輪に向けての第1歩

7月の世界選手権で表彰台復帰を狙う乾(左)吉田ペア
7月の世界選手権で表彰台復帰を狙う乾(左)吉田ペア

「マーメイドジャパン」が20年東京五輪に向けて、いよいよ勝負モードに入る。世界最強国ロシアら世界の強豪が参戦するジャパンオープン。エース乾友紀子(28)は「ロシアが来ることは珍しいが、強い国がくるとやりがいがある。びくびくせずにいいエネルギーに変えたい」と意気込む。

東京五輪を見据えて、新ルーティンが披露される。乾、吉田萌(めぐむ、23)のデュエットはTRが「くのいち桜吹雪」になった。井村雅代ヘッドコーチ(HC、68)は「五輪を意識している。日本的なもの、忍者に乗ろうと考えている。リズム感を出して桜吹雪も表現する」と説明。昨年6月からデュエットに抜てきされた吉田は「表情のアピールをしっかりやりたい」と課題を意識している。

3人のジャパンオープン初出場組にも期待がかかる新生マーメイドジャパン
3人のジャパンオープン初出場組にも期待がかかる新生マーメイドジャパン

チームは、木島萌香(19)熊谷日奈多(18)柳沢明希(あかね、20)がジャパンオープン初出場組だ。FRは新ルーティン「IYO ! 〜祝おう ! 〜(東京は今日もお祭り騒ぎ)」で臨む。日本全国のお祭りのおはやし、かけ声を入れて、最後は一本締めで締める。伝統を取り入れた、リズミカルで明るい曲だ。井村HCは「やってて楽しい、見てて楽しい。客席もわかって乗ってくれると思う」。ホームの声援や手拍子を味方に会場全体を盛り上げる仕掛けだ。また非五輪種目のハイライトルーティン「恐竜」も新しい演技だ。

今大会を世界選手権表彰台へのステップにしたい足立(右)安部組
今大会を世界選手権表彰台へのステップにしたい足立(右)安部組

東京五輪から逆算した場合、7月の世界選手権韓国大会は表彰台返り咲きが重要になる。17年世界選手権ブダペスト大会は1位ロシア、2位中国に次ぐ3位争いをウクライナと繰り広げた。しかし五輪種目のメダルはチームTRの銅メダルだけ。井村HCは「世界選手権ではメダルをとっておくことが大事。東京五輪ではその色を争いたい」と青写真を描く。乾も「2年前の世界選手権でメダルを逃している。リオ五輪でメダルをとったけど、チャレンジャー」と口にする。東京五輪に向けた第1歩がジャパンオープンから始まる

混合デュエットでは足立夢実(30)安部篤史(36)組が出場。安部は「目標は世界選手権の表彰台しかない」と意気込んでおり、ジャパンオープンで世界中に実力をアピールする。

ロシアの伝説ロマーシナが参戦

ロシアの伝説の選手ロマーシナ
ロシアの伝説の選手ロマーシナ

ロシアからはロンドンとリオ五輪でデュエット連続金メダルのスベトラーナ・ロマーシナ(29)が出場する。世界選手権では2009年ローマから15年カザンまで、4大会連続デュエット2種目(テクニカル、フリー)制覇も果たした伝説の選手。リオ後に一度引退したが、20年東京五輪に向けて復帰を決めた。13年バルセロナの時のコンビで、17年ブダペスト2種目制覇のスベトラーナ・コレスニチェンコ(25)と、今回はペアを組んで登場する。

日本水連の本間三和子AS委員長は同ペアの6年前の様子について「ものすごい内容の詰まった演技で圧巻でした」と振り返った。そして、「ロシアは完成された人ばかり。技のすごさが特長」と今回の演技に注目している。

迎え撃つ日本代表の乾・吉田組。昨年のアジア大会で国際デビューしたが、中国の32歳の双子のベテラン蒋文文・テイテイ組の後じんを拝した。今大会にはこの2人も参加するだけに、アジア大会の雪辱を果たした上、世界一の実績を誇るロシアペアに肉薄したいところ。乾は「上を目指していくにはロシアを食うくらいのレベルに上がらなければならない」と高い目標を掲げた。本間委員長は「演技構成、情緒の豊かさ、表現力を見せ、観客を引きつけてほしい」と期待を寄せる。

昨年のジャパンオープンに出場したミニシニ(右)フラミニ組
昨年のジャパンオープンに出場したミニシニ(右)フラミニ組

もう一つ注目したいのが混合デュエットだ。17年ブダペスト世界選手権テクニカル金メダルのジョルジオ・ミニシニ(23)マニラ・フラミニ(31)のイタリア組と、同選手権フリー金メダルのアレクサンドル・マリツェフ(23)がマイヤ・グルバンベルディエワ(20)とコンビを組む若いロシア組が、世界トップレベルの争いを繰り広げてくれるだろう。日本からは同選手権2種目とも4位入賞の足立・安部組が悲願の世界選手権表彰台を目指し、世界トップ2組としのぎを削る。本間委員長は「新しい作品に挑み、その構成は良いので、完成度を上げてほしい」と2人にエールを送った。

乾・吉田ペア 最強ロシア迎え撃つ

アーティスティックスイミングの国際水泳連盟(FINA)ワールドシリーズ(WS)第4戦「ジャパンオープン2019兼第95回日本選手権」が4月27〜29日、東京辰巳国際水泳場で行われる。7月の韓国・光州世界選手権、20年東京五輪で表彰台を狙う日本代表が新演技で、最強ロシアをはじめとする世界23カ国を迎え撃つ。エース乾友紀子(28)にとって今後の1年半は選手人生の集大成。井村雅代ヘッドコーチ(HC)の熱い指導の下、まずはジャパンオープンで世界を驚かせたい。

「生」で見る刺激

ASデュエット競技で7月の世界選手権、東京五輪でのメダル獲得を目指す乾(右)と吉田(撮影・柴田隆二)
ASデュエット競技で7月の世界選手権、東京五輪でのメダル獲得を目指す乾(右)と吉田(撮影・柴田隆二)

17年ブダペスト世界選手権ではテクニカル、フリーともに4位に終わった日本代表デュエット。東京五輪で16年リオに続く連続メダル獲得を期す乾は、新コンビ吉田萌(23)とともに、まずは世界の表彰台復帰を最重要課題として掲げる。そのため1日約9時間、週6日間の練習を最低限とする厳しい合宿を続ける。

昨年6月のカナダオープンのテクニカルからペアを組んだ2人。乾は「練習期間が短い中で良いスタートが切れた」と言いながらも「ミス無く泳ぐことはできたが、オリジナリティーはなかった」と反省した。そして、同年8月のジャカルタアジア大会では「目標の金メダルには届かなかったが、自分たちの良さも悪さも感じることができた」という。

良さは音楽の取り方と乗り方。悪さは演技のスケールと高さ。乾は「2人でチャレンジしていける手応えを感じ」つつも「難易度を上げていかねばならない」ことを痛感した。「あの時は自分の力は出し切れた」という吉田も今は「見返すと高さが低い。世界選手権とオリンピックを考えると、もっとレベルアップが必要」と気持ちを新たにしている。

AS日本代表の13人。前列左から丸茂、足立、小俣。中列左から京極、乾、吉田、木島。後列左から柳沢、熊谷、塚本、福村、安永、安部
AS日本代表の13人。前列左から丸茂、足立、小俣。中列左から京極、乾、吉田、木島。後列左から柳沢、熊谷、塚本、福村、安永、安部

吉田のレベルが乾に追い付くことが何よりだが、吉田が演技中「焦って合わせようとすると、自分の動きを省略することがある」という。これは乾も感じており、「ロシアはそういうところが違う」と世界最強ペアの演技を引き合いに出した。「エレメンツ(各規定要素の完遂度)はロシアが世界の流れを作っている。上を目指していくにはロシアを食うくらいのレベルに上がらなければならない」と高い目標を掲げる。

ジャパンオープンには、そのロシアのデュエット代表が久しぶりに出場する。東京に向け復帰したリオ金メダルのスベトラーナ・ロマーシナ(29)も来日を予定しており、とくに「ロシアをまだ生で見ていない」吉田は、その刺激を今から心待ちにしている。

◆乾友紀子デュエット世界大会成績◆
年齢開催地大会名種目ペア選手名順位
0918ローマWCTR小林千紗4位
FR酒井麻里子6位
1120上海WCTR小林千紗5位
FR小林千紗5位
1221ロンドンOLD小林千紗5位
1322バルセロナWCTR足立夢実5位
FR足立夢実5位
1524カザンWCTR三井梨紗子3位
FR三井梨紗子4位
1625リオOLD三井梨紗子3位
1726ブダペストWCTR中村麻衣4位
FR中牧佳南4位
(注)WCは世界選手権、OLは五輪、TRはテクニカル、FRはフリー、Dはデュエット

日本代表選手のASWS2019ジャパンオープンへの抱負

 乾友紀子(28=井村ASクラブ)
WSとして演技内容、点数を世界から見られるのを意識し泳ぐ

 吉田萌(23=ザ・クラブピア88)
今季初めてやるプログラムもあり、良い演技を披露したい

 小俣夏乃(22=アクラブ調布)
ダイナミックなリフトを持ち上げ、印象に残るように泳ぐ

木島萌香(19=井村ASクラブ)
日本代表で初のJオープンで力を爆発させて大きな演技をする

 京極おきな(17=井村ASクラブ)
昨年よりリフトのジャンプの難易度を上げ、グレードアップする

熊谷日奈多(17=井村ASクラブ)
リフトでジャンパーがしっかり飛べるように支え、笑顔で頑張る

 塚本真由(21=東京ASクラブ)
会場を沸かせるようなパワフルでノリノリの演技を目指す

 福村寿華(22=井村ASクラブ)
力強さと勢いを感じさせて泳ぎ、今季の良いスタートにする

 丸茂圭衣(26=井村ASクラブ)
このチームは東京五輪のメダルがいけそうだという演技を見せる

 安永真白(19=井村ASクラブ)
元気のある力強い演技ができるように頑張る

柳沢明希(20=アテナアクアメイツ)
A代表初のJオープンでスピード感と高さのある演技をする

 足立夢実(30=楓心舘)
数少ない日本での試合で自分たちのベストな演技を見せる

 安部篤史(36=楓心舘)
最終目標の世界選手権表彰台に向けジャッジにアピールする

(注)は新代表

3人入れ替わり新チームが始動

昨年から3人が入れ替わった新チームは1月から始動した。井村HCは「新人たちは頑張っているが、エネルギーが外に出てこない」と現状は厳しく評価。「未完成でもいい。エネルギーが湧き出るようなチームになってほしい」と殻を破る成長に期待を込めた。

井村HC 7月の世界選手権照準

選手を熱く指導する井村雅代コーチ
選手を熱く指導する井村雅代コーチ

乾のデキについては厳しい井村HCも「ここ数年成長している。あの年であれだけ進化するのは珍しい」と高く評価する。「体を自由に使った演技ができている」と柔軟性に注目。ソロではこれまで世界4位止まりだったが、「割って入るだけの力をつけてきた。今度はメダルを取りに行く」と7月に照準を合わせる。

そして、乾を五輪種目のデュエット、チームの柱として信頼する一方、昨年からデュエットでコンビを組む吉田に大きな期待を寄せる。「乾が自分より足の長い選手と組むのは初めて。珍しくそろったデュエットで、足を見ただけでは間違えることもある」という。「二人とも音感が良い。教えていても楽しい」と井村HCは、乾・吉田組のシンクロぶりに目を細めた。

課題は吉田の倒立系の技術。「軸が取れていないから高さも出ない。それが乾との差がなくなれば、東京が楽しみになってくる」とその成長を待ち望む。WS4試合(フランス、日本、米国、カナダ)への出場も決めた。「吉田が有名人じゃないので顔を売っておく方が良い」との判断。「あえて外での戦いをしにいく」ことで7月にメダルをたぐり寄せる構えだ。

その先の目標はもちろん東京でのより輝くメダル。そのためには、17年に後じんを拝したウクライナを、7月にしのぐ必要がある。「オリンピック種目でやっつけないといけない」。メダル請負人の異名を持つ井村HCは、そう言って自らを奮い立たせた。

今年もヤクルトが日本代表サポート

ヤクルトマンとヤクルト400LTを手に笑顔の乾(右)と吉田
ヤクルトマンとヤクルト400LTを手に笑顔の乾(右)と吉田

ヤクルト本社が今年も乳製品で日本代表をサポートする。なかでも生きて腸内まで到達し、腸内環境を改善する乳酸菌 シロタ株を1本(80ミリリットル)あたり400億個含んだ乳酸菌飲料ヤクルト400LTは、カロリーと甘さひかえめ。体の管理には強い味方だ。エース乾は「毎日欠かさず飲んでいると胃の調子が良い」。デュエットを組む吉田も「合宿中毎日飲んで丈夫な体です」と口をそろえた。

今年のWSは全9戦

今年のWSは2月28〜3月3日の第1戦フランスオープン(パリ)を皮切りに、6月14〜16日のスーパーファイナル(ハンガリー・ブダペスト)まで全9戦が行われる。第2戦ギリシャ、第3戦ロシア、第4戦日本、第5戦中国、第6戦米国、第7戦カナダ、第8戦スペインの日程で、いずれも世界上位国で行う。

【観戦ガイド】

◆日  程
4月27日(土)ソロ・混合デュエット・デュエット・チーム各TR
4月28日(日)チーム・デュエット・混合デュエット各FR
4月29日(月・祝)ハイライトルーティン、ソロFR、フリーコンビネーション
(注)TRはテクニカル、FRはフリー。各日午前8時開場、同9時開始予定
◆会  場
東京辰巳国際水泳場(東京メトロ辰巳駅)
◆料  金
3日間通し指定席=1万3000円
指定席SS=5000円
同S=4000円
同A=3000円
自由席中学生以上=2000円
同小学生以下=1000円(3歳未満無料)
◆前売り所
キョードー東京(チケット問い合わせ先)電話0570(550)799=https://ticket.kyodotokyo.com
チケットぴあ=http://w.pia.jp/t/ja-swim/
ローソンチケット=http://l-tike.com/sports/as2019/
e+=http://eplus.jp/as/
◆関係団体
〈主催〉日本水泳連盟
〈主管〉東京都水泳協会
〈後援〉日刊スポーツ新聞社、上月財団
〈特別協賛〉ヤクルト本社
〈協賛〉GMOクリック証券、ブルボン、味の素、ENEOS、ディップ、東京海上日動火災保険、東京海上日動あんしん生命保険、日本製粉、レオパレス21、コーセー、日本航空、ファイテン、セイコーホールディングス、デサントジャパン、アシックスジャパン、ミズノ、オーエンス、タキロンマテックス、バカラ パシフィック、ヤマハ発動機、京王観光
〈協力〉鈴乃屋