向かい合ってボールを打ち合う相手は、敵ではなく味方。砂浜を舞台に行われるフレスコボールには、他のスポーツでは味わえない「思いやり」がある。2人1組のペアがラケットでボールを打ち合い、得点はラリー回数や技術で加算。一回勝負、わずか5分に全てを懸ける。9月には国内最高峰の大会「ビオレUVアスリズムフレスコボールジャパンオープン2021」が開催される。全国各地の16クラブから選手が集い、信頼する相棒と頂点を目指す。ソーシャルディスタンススポーツとしても注目を集めるフレスコボールのおもしろさ、大会に懸ける思いを5人の選手に聞いた。

ブラジル発の「思いやりのスポーツ」

全長約4キロにわたる白い砂浜。「南米の羽子板」とも呼ばれるフレスコボールは1945年、世界的に知られるブラジル・リオデジャネイロの「コパカバーナ・ビーチ」で生まれた。大会では賑やかな音楽が流れ、MCによる演出で、お祭りのように盛り上がる。アットホームな雰囲気ができあがる理由は、それだけでない。

 敵がいない―

7メートルの距離をとってボールを打ち合う相手は「仲間」だ。テニスや卓球のように相手が嫌がるところにボールを打つのではなく、相手と協力してラリーをする様子から「思いやりのスポーツ」と表現される。

子供からお年寄りまで手軽にプレー可能

瀬戸内フレスコボールクラブの宮脇勇輔
瀬戸内フレスコボールクラブの宮脇勇輔

瀬戸内フレスコボールクラブ(香川)に所属する宮脇勇輔(26)は勝負の世界に疲れていた。学生時代はテニスに打ち込む日々。社会人となったある日、海辺でビーチテニスをしていると、近くでフレスコボールが行われていた。楽しそうな雰囲気に興味を持ち「ちょっとやらせてください」と輪に飛び込んだ。

フレスコボールには単純にスポーツを楽しみたい「enjoy勢」、結果を求める「アスリート勢」が混在する。その両者が共存できるのも魅力だという。

「enjoy勢は楽しくやっているけど、大会ではアスリート勢を応援します。逆に、アスリート勢もenjoy勢を応援するんです」

競技に必要なのはボールとラケットのみ。ペアを組む1人を探せば、場所も選ばない。子供からお年寄りまで気軽に始められ、日本のプレーヤーも約5000人まで増えた。

結婚のきっかけはフレスコボール

フレスコボールをきっかけに結婚をした芝夫妻
フレスコボールをきっかけに結婚をした芝夫妻

芝卓史(34=フレスコボール福岡)は、大学の後輩が日本代表で活躍していることを知って興味を持った。5年前の暑い夏を思い返して笑った。

「海に行きたいという理由が大きかったかもしれないです」

学生時代までテニスに熱中。苦手だったストロークではなく、好きなボレーだけを続ける感覚が合っていた。この出会いが人生を変えた。

競技を続ける中で、日本フレスコボール協会のスタッフを務めていた有沙(28)と出会った。やがて意気投合し結婚。当時は東京に住んでいたが、出産を機に福岡へ移住した。子育ての環境だけでなく「九州にはフレスコボールをできるビーチが多い」という理由もあった。日本代表で活躍する両親の姿に、子は「やってみたい」と目を輝かせている。

「強制はしたくないけど(フレスコボールを)やってくれたら、うれしいですよね」

家族の思い出が、1つ1つビーチに刻まれていく。

「フレスコって何?」マイナーならではの魅力

フレスコボール関西の宮山有紀(左)と風味千賀子
フレスコボール関西の宮山有紀(左)と風味千賀子

マイナースポーツならではの魅力もある。宮山有紀(31)は言う。

「『フレスコボールって何?』と聞かれたところから、人とのつながりが増えることが多いです」

競技に対する興味をきっかけに、話が弾んだ例がいくつもある。

宮山とペアを組む風味千賀子(31=ともにフレスコボール関西)も、楽しさを口にする。

「5歳から75歳くらいまでの人たちが同じ場所、同じスポーツで知り合える。普段なら出会えない人とフレスコボールを通じて仲良くなれます」

20年度女子カテゴリー1位の2人は、4月にそれまで勤めていた職場を退職した。

仕事とフレスコボール、どちらをとるか―。葛藤もあったが「やりたいことを優先して、楽しく生きよう」という気持ちが勝った。風味は「今まで自分のやりたいことを後回しにしてきたけど、フレスコボールで自分と向き合う時間が増えた」。宮山も「フレスコボールとの出会いがきっかけで選択肢が広がった」と感謝している。

フレスコボールには人間教育にも不可欠な「思いやり」の精神がある。

「学校にもフレスコボールを届けたい」―

競技普及を目指す出張講座では、同時にその大切さを伝えている。

クラブ独自の取り組みで四国初大会開催

黒潮フレスコボールクラブの織田修平
黒潮フレスコボールクラブの織田修平

76年の歴史を刻むフレスコボールだが、日本での歴史はまだ浅い。2013年に一般社団法人日本フレスコボール協会が設立。公式戦は年に5回あり、全国から選手が集う。7月31日に開催されるアリアケカップは、2月のオキナワカップ以来、5カ月ぶりとなる大会だ。

アリアケカップは四国で初の開催となる。かつて地方クラブは大会のたびに遠征を余儀なくされたが、近年は関西などでも行われるようになった。四国のクラブを中心に誘致活動を行った同カップは、クラウドファンディングで大会運営資金を調達するなど新たな試みも進んでいる。地元の高校生と協力し、来場者へ地域の魅力を発信する企画にも取り組む。織田修平(29=黒潮フレスコボールクラブ)は大会を待ちわびる1人だ。

「終わった後に、四国に来てよかったと思ってもらえるようにしたい。教育や介護の現場でもフレスコボールをやってもらいたい。勝負の場以外でもコミュニケーションの活性化につなげたいんです」

「思いやり」を結集させて作り上げる大会は、地域に競技を根付かせる第1歩となる。

ジャパンオープン優勝で日本代表決定

福岡にトロフィーをと意気込む芝
福岡にトロフィーをと意気込む芝

9月には年間で最も重要な大会である「ビオレUVアスリズムフレスコボールジャパンオープン」を控える。今年の方式では優勝ペアが日本代表に確定することもあり、選手たちの思いは強い。

四国の宮脇と織田は「やれることをやりきるだけやけん」と誓い、四国勢初の入賞を目指す。

教員を経験してきた風味・宮山ペアは「ペアで3年間組んでいて、2人とも力を出し切れた感覚が今までない。2人とも力を出し切った気持ちで終えたい」と決意をにじませる。関西からの参加者も徐々に増え「初参加のメンバーをぜひ見てほしい」とアピールも忘れていない。

家族でフレスコボールを愛してきた芝は「他の地域より競技が広まっていない福岡にトロフィーを持って帰る」と言い切った。勝負の場であり、交流の場である大舞台を「普段会えない人と久々に会って、いろんな刺激を受けたい」と心待ちにしている。

70組が集い頂点を目指す戦いは、9月25・26日に千葉県稲毛海浜公園で行われる。心地よい風に包まれ、砂浜で繰り広げられる戦いの魅力は尽きない。

大会概要

■ビオレUVアスリズムフレスコボールジャパンオープン2021

開催日:2021年9月25日(土)、26日(日)

開催地:千葉県千葉市稲毛海浜公園いなげの浜

主催:一般社団法人日本フレスコボール協会(JFBA)

観戦料:無料

JFBA公式HPはこちら

【提供】一般社団法人日本フレスコボール協会