<全国高校総体:陸上>◇第4日◇7月31日◇大分銀行ドーム

 次はボルト!

 陸上男子100メートルで日本初の9秒台を狙う桐生祥秀(17=京都・洛南高3年)が、大会新記録で初タイトルを獲得した。この日3レース目となった決勝で追い風0・1メートルの中、10秒19。94年に高橋和裕の記録した10秒24を19年ぶりに更新し、中学、高校を通じて初の日本一に。念願を果たし、100メートルの次戦は世界選手権(8月10日開幕、モスクワ)。世界記録保持者ウサイン・ボルト(26)との対戦を希望した。

 猛暑を吹き飛ばすジェット桐生だった。最高気温35・5度の大分銀行ドームでかっ飛ばした。男子100メートル決勝。スタートから飛び出して40メートル付近で独走態勢。圧倒的な力を見せて10秒19でフィニッシュ。予選を10秒50、準決勝を10秒32で駆け抜けて、19年ぶりに大会記録を更新し、初の栄冠。しかも3本目の決勝は日本歴代9位相当の好記録というタフガイぶりだ。

 桐生

 負けることは何も考えなかった。いつも暑い中でやっているからいつも通り。日本一をやっととれた。ホッとして、ゴール後は上を向きました。

 これまで全国中学校体育大会、高校総体で個人タイトルはなし。度重なるけがで、大事なレースに勝てない。そんなかつての自分と決別した。今年の目標に掲げて「絶対、優勝と決めていた」と照準を合わせたレースできっちりと結果を出した。大会新記録に「名前が残ってうれしい」とにっこり。表彰式では出身地の滋賀・彦根が誇るゆるキャラ「ひこにゃん」ポーズで喜びを示した。

 高校生としての念願を果たし、次の100メートルは世界選手権。「生で見てみたい」という憧れのボルトも出場する。ボルトは6月28日に「17歳というのはこの先、長い競技人生が控えている。十分な時間をかけ、陸上を楽しむべきだ」と桐生にアドバイスしている。

 桐生

 自分も、100メートルを走るのが楽しくて陸上をやっているので、楽しくいきたい。100メートルもマイナスを補うより、プラスを上げるようにしている。(ボルトと)一緒にできることなら走ってみたい。

 成長する17歳は、ずぶとさも身につけ始めた。6月30日に英国バーミンガムでダイヤモンドリーグ(DL)に初出場。人生初の海外、しかも世界最高峰のレース。げっそりやせてもおかしくない状況で、なんと2キロも体重が増えて帰国した。環境の変化も苦にせず、英国料理を平然とぱくついた。今大会は宿舎の体重計でウエートコントロールしているが、周囲をびっくりさせた。この日の100メートル決勝直前も女性ファンの求めに応じて気軽に握手。ピリピリムードのチームメートをあぜんとさせた。

 桐生

 100メートルはしっかり世界で戦える選手になりたい。ここで出したように緊張せずに走りたい。(DL)バーミンガムの経験は、世界選手権に向けていい経験になると思う。

 たくましさを増してきたジェット桐生が、モスクワでボルトとの真剣勝負に挑む。【益田一弘】

 ◆世界選手権

 8月10日から18日までロシア・モスクワで行われる。メーン会場は80年モスクワ五輪でも使用された7万人収容のルジニキスタジアム。男子100メートルは、開幕初日の同10日に予選、11日に準決勝と決勝が行われる。