<柔道:全日本選抜体重別>◇第1日◇11日◇福岡国際センター◇男女7階級

 女子48キロ級の浅見八瑠奈(25=コマツ)が、8度目の出場で涙の初優勝を果たした。決勝で山崎珠美(19)に一本背負い投げで一本勝ち。ロンドン五輪の最終選考会だった昨年大会では1回戦敗退。苦難の1年間を乗り越え、頂点に立った。今大会が最終選考会で、出場を確実にした世界選手権(8~9月、リオデジャネイロ)では3連覇に挑む。

 右袖で、左袖で、あふれる涙をぬぐう。決勝戦、3分33秒、低く素早く山崎の懐に潜り込む。担いでググッと力強く伸び上がり、鮮やかな一本勝ち。もう感情を抑えられなかった。

 浅見

 私1人だったら足を止めていた。たくさんの人が一緒に戦って下さって、また1歩を踏み出すことができました。

 つらい1年だった。五輪代表争いで頭1つ抜けて昨年大会を迎えたが、1回戦負け。悪夢だった。

 実直な性格ゆえに、辞退もできた直後の代表合宿に参加。失意と悔しさを抱えながら、逃げずに五輪代表選手の相手を務めた。その姿勢を所属するコマツの松岡監督は「本当に頭が下がる。絶対に弱音を吐かなかった」と振り返る。役目を終え、直後から愛媛の実家に戻ると引きこもった。「家族でも人前に出るときは顔を作った」。平静を装い心配かけまいともがいた。

 だが、さらなる苦難に襲われる。6月上旬に大好きな祖母吉代さんが白血病を発症。誰よりロンドン五輪を楽しみにしていた。「自分のせいで病気になったんだ…」。己を責めた。7月13日、77歳の命を終えた。

 再び畳に戻れるのか。そんな時、祖母が病にかかる前の言葉を思い出した。「私は来年の世界選手権に行く元気はないかも。だけど、お母さんを連れて行ってあげて」。柔道家の父三喜夫さんからは「素直な心

 謙虚な心

 感謝の心

 あきらめない心」と書いた手紙ももらっていた。あきらめられなかった。

 この日踏み出した1歩を、さらなる歓喜につなげる。「今日と同じ(金)メダルを日本に持ち帰りたい」。まずは世界選手権での3連覇へと-。【阿部健吾】

 ◆浅見八瑠奈(あさみ・はるな)1988年(昭63)4月12日、愛媛県伊予市生まれ。3歳から伊予柔道会で柔道を始める。新田高-山梨学院大-コマツ。10、11年世界選手権2連覇。得意技は背負い投げ。右組み。家族は両親と姉、弟。153センチ。