元MotoGPライダー中野真矢氏(32)が1日、引退会見で流した涙の理由や今後の活動について笑顔を交えて語った。

 引退から約1カ月が経ち、中野氏は吹っ切れた表情を見せた。「ようやくプレッシャーから開放された」。現役時代には「宴席の最中でも、たとえ新婚旅行先でも、レースのことが頭から離れなかった」と話す。現在は現役時代にしていたトレーニングも中断して、のんびりした生活を楽しんでいるようだ。

 10月28日に行われた引退会見は、報道陣はもちろん、数多くの関係者であふれかえった。中野氏自身としては、引退へのけじめはしっかりついていた。思い残すこともなかった。だが、「お世話になった関係者ひとりひとりの顔を見ると、いろいろと思い出すことがあって」涙が止まらなくなったという。涙で言葉を詰まらせる中野氏を見て、もらい泣きする関係者の姿もあった。

 11月には、中野氏自身のブランドショップが主催するツーリングにも参加した。コンマ1秒以下でタイムを競うレースと違い、ツーリングは集団で安全にバイクを楽しむことが求められる。「時速300キロの世界では、風というのは戦うべき存在だった。でも今回のツーリングでは初めて風を楽しむことができました」。ツーリング当日はあいにくの天候だったが、ヘルメットの中では終始笑顔が絶えなかったという。

 今後の目標として、モータースポーツ界への貢献を挙げた。世界的な不況は、ホンダの2輪レース撤退・縮小やトヨタのF1撤退など、モータースポーツ界にも暗い影を落とす。中野氏はそんな状況に危機感を募らせつつも、「オートバイの面白さを伝えていきたい。いままで育ててくれた業界に恩返しがしたい」。メディアに積極的に関わっていくことで、モータースポーツ界のすそ野を広げていきたいと話す。また「究極の目標としては自分のチームを持ちたい」と夢も語った。

 また現在、千葉市の「56design」2階で、中野氏のメモリアル展が開催されている。全日本選手権時代から、今年のスーパーバイク世界選手権まで、実際着用して参戦していた歴代レーシングスーツ、ヘルメット、そしてモニターにて過去の映像、写真パネルなどを展示している。12月13日まで。詳細は

 http://www.56-design.com/