「大人の真央」で前人未到の道を歩む。フィギュアスケート元世界女王の浅田真央(24=中京大卒)が18日、都内で会見し現役続行を目指す意向を示した。座長を務める今夏のアイスショー「THE ICE」の発表会見で「試合が恋しくなり、達成感をまた感じたいと思い始めた」と明かした。今季1年間の休養のブランクも考え、復帰戦は未定。まずは戦える状態に戻すことに専念する。18年平昌五輪時には27歳。戦後最年長メダリストへの挑戦にもなる。

 決意がにじむ言葉だった。ずっと自分だけの武器として跳び続け、数々の快挙を生んだトリプルアクセル(3回転半)へのこだわりを聞かれたときだった。

 浅田 24歳でスケート界ではベテランに入ってきている。ジャンプの技術を落とさないことは大事ですが、それだけではなく大人の滑りができればいいな。

 年齢を重ねて競技を続ける意義は、これまで愚直にも追い求めた大技以外の要素への期待と高揚感。もうすぐ20代後半、体への負担は自覚するが、それ以上に新たな可能性に心躍る。「大人」という表現には希望が詰まっていた。

 昨年の5月19日、1年間の休養を宣言した。去就を「ハーフハーフ(半々)」と述べた心境を確かめるため、365日が過ぎた。「できるかな、できないかなという気持ちを繰り返した」。今年の正月には近しい関係者に「やめます」と伝えたこともあった。ただ、その後にショーなどで氷上に戻ると、気持ちは揺れた。1月には昨季まで師事した佐藤信夫コーチから「もう1度やるのはそんなに簡単ではない」と諭されたが、「スケートが欠かせない」「試合に出たいのかな」と感じ始めていった。

 新境地への予感もあったのだろう。昨年のソチ五輪ではショートプログラム(SP)で16位と失墜しながら、フリーでは復活の演技で世界中の感動を呼んだ。帰国後、練習を見た同コーチは「うまくなったな~」とうなった。「命をかけて(五輪で)戦ったわけですから。大きな山を越えると、上のレベルになることがある」。技術ではない、スケーターとしての可能性。先がある。そう思えた。

 5月、現役続行するために練習を再開した。「去年の世界選手権までのレベルには最低もっていかないと」と期す。SPで世界最高点、合計で自己記録を刻んだ大会、その高水準が試合に出るための指標となる。厳しさを考え、10月開始のグランプリ(GP)シリーズの欠場は濃厚、プログラム作りの予定も未定。状態を自問し、滑り込む。

 3年後、3度目の五輪となる平昌大会を目指すのか。「いまの時点では考えていない」が、「100%復帰するつもりでやっている。うまくいけば出られるかもしれないし、出られないこともある」とも述べた。18年は27歳。戦後では20代後半のメダリストは54人中2人、わずか4%しかいない。険しい道だが、進む。

 会見では両手でマイクを握り、丁寧に言葉をつなげた。「いろんな思いはあるけど、自分にいまは期待しながら練習しています」。新緑の季節。新たな浅田真央が芽吹き始める。【阿部健吾】