ついに全仏の帝王ナダルが陥落した。6連覇を狙った世界7位のラファエル・ナダル(29=スペイン)が、同1位のジョコビッチ(セルビア)に5-7、3-6、1-6の2時間26分で敗れ、全仏の連勝が39で止まった。05年の全仏初優勝後、全仏までの欧州の赤土大会で優勝がない初めての年となった。同15位のツォンガ(フランス)が決勝に進むと、ナダルは8日発表の最新世界ランキングで11位となり、05年4月18日発表の11位以来のトップ10転落となる。

 全仏のひとつの歴史に終止符が打たれた。マッチポイントでナダルが放った第2サーブは、むなしくサービスラインを越えた。「相手がいつも主導権を握っていた。相手が勝っていただけ。簡単なこと」。あっけない幕切れにも、ナダルはいつもの潔さを見せた。

 世界が注目する一戦だった。09年に4回戦で敗れただけで、過去10回出場で9度の優勝を誇る全仏の帝王と、世界1位で今季、赤土無敗の王者との決戦。だが、試合は世界1位と7位という、現在の世界ランキングを如実に反映した準々決勝にすぎなかった。

 ナダルは全仏で今年の4回戦まで通算70勝1敗。強烈な回転をかけた球で何度も相手を苦しめ、窮地からも脱してきた。しかし、この日、球に勢いはなく、ジョコビッチに好きなように打ち込まれた。「ジョコビッチのような完璧な選手には、今の状態では勝つのに十分ではなかった」。

 今季、全仏前哨戦の欧州赤土大会で、初めて1度も優勝できなかった。昨年の中盤、右手首をケガし、全米を欠場。昨年11月には虫垂炎を手術した。実戦不足やケガへの不安からか、自信が戻っていない。トップ10陥落の可能性もあり、ナダル時代の終焉(しゅうえん)もささやかれ始めた。

 しかし、ナダルはいつものように前を向く。「09年に負けた時も終わりじゃなかった。今年も負けたが、終わりじゃない。来年に、またチャンスがある」。この日、29歳の誕生日を迎えた。全仏の期間中、いつもコート上で誕生日を祝福された。しかし、この日、そのセレモニーは行われなかった。【吉松忠弘】

 ◆ラファエル・ナダル 1986年6月3日、スペイン・マヨルカ生まれ。5歳でテニスを始め、02年プロ転向。05年の全仏で大会史上2人目の初出場初優勝を飾った。06年に赤土60連勝の世界新を達成した。08年ウィンブルドン初制覇で、初の世界1位に輝いた。ツアー通算65勝。サッカーのスペイン代表で02年W杯に出場したミゲルアンヘルは叔父。185センチ、85キロ。

 ◆WOWOW放送予定 5日午後5時~、車いす男女シングルス準決勝ほか。同日午後7時50分~、男子シングルス準決勝、すべてWOWOWライブ。生中継。放送時間変更の場合あり。