アーチェリーの五輪メダリストで52歳の山本博(日体大教)が、圧倒的な強さで壮年の部(40歳以上)を制した。

 決勝では昨年王者の安藤智俊(神奈川県)に6-0で完勝、2年ぶりの優勝を果たした。84年ロサンゼルス五輪銅、04年アテネ五輪銀メダリストが、20年東京五輪での悲願の金メダル獲得にあらためて照準を定めた。

 日焼けした52歳の笑顔に自信がみなぎっていた。「決勝はアテネ五輪当時と変わらないプレーができた。あらためて自分はまだできるんだと思いました。だからやめられないですよ」。風の強い悪条件下で、ペースを乱すことなく、4試合はいずれも圧勝。「壮年の部(40歳以上)での試合でしたが、相手が誰でも同じプレーができますよ」と口も滑らかだった。

 現時点で国際大会に出場できるナショナルチームのメンバーから外れているため、来年のリオデジャネイロ五輪出場の可能性は極めて低い。すでに山本は目標を「20年の東京五輪で金メダル」に切り替えて、今シーズンから5年間の長期計画を立てている。「来年、五輪だと金メダルは厳しいかもしれない。でも5年あればまだいける」と意欲は衰えていない。

 今年3月に弘前大大学院で医学博士の学位を取得した。選手の血液検査などのデータを集めて、アーチェリーの試合数による免疫機能の変化と筋疲労などを研究した。その成果を自身にも生かしている。今年は月に3、4試合と昨年から試合数を1・5倍に増やしたが、「練習量に応じてトレーナーに見てもらっています。体調もいい」。

 銅メダルを獲得した84年ロサンゼルス五輪から31年。いまだトップレベルを維持し続ける理由について「今は遊びの延長でプレーしている。だから頑張れるし、心底楽しんでいる。だからこの年齢でこのレベルでやれているんでしょうね」と山本は自然体を強調した。【首藤正徳】