女子の新エースが、日本を2大会ぶりのアジア王座に導いた。シニアの国際大会初出場の杉原愛子(15=大阪・梅花高)が安定した演技で4種目に高得点を連発。日本の団体優勝に貢献するとともに、個人総合でも金メダルに輝いた。5月のNHK杯優勝で世界選手権(10月・英グラスゴー)代表に滑り込んだ高校1年生が、日本女子のエースの座に躍り出た。

 表彰台の真ん中で、杉原は大きく手を振った。「実感はないです。ただ高いと思っただけ」とはいうものの、スタンドに向けて飛びきりの笑顔。「名前を呼ばれた時と表彰台に上る時、鳥肌が立ちました」。初出場での快挙を振り返った。

 安定感が抜群だった。4種目すべて3番手で登場。「ノーミスでやれたことがよかった」。2位になった中国の王妍との差は、わずか0・05点。それでも昨年のアジアジュニアで敗れた同じ15歳にリベンジを果たした。相手のミス連発もあったものの「絶対に勝てないと思っていたので、うれしい」と笑顔をみせた。

 小4から指導を受けている片岡卓也コーチが、6月に暴力指導を黙認したとして日本協会から1年間の登録停止処分を受けた。しかし、この日杉原をピンチから救ったのは同コーチ。平均台の演技中に緊張から足が震えだした愛弟子にスタンドから声をかけた。「コーチの声を聞いて、スッと落ち着けた」と話した。

 女子代表の塚原千恵子監督は、団体優勝に「中国が失敗しなきゃ負けていた。もう少し力をつけないと」と主力を欠いた中国との競り合いには辛口。しかし、杉原については「初出場なのに、すごく落ち着いていた」と絶賛。世界選手権、さらにリオデジャネイロ五輪に向けて期待した。

 「寺本さんや笹田さんには私にはない経験があるから」と控えめに言いながらも「エースとして見てもらいたい」と堂々の新エース宣言。アジア女王は「世界選手権では団体も個人もメダルをとりたい」と大きな野望を口にした。【荻島弘一】

 ◆杉原愛子(すぎはら・あいこ)1999年(平11)9月19日、東大阪市生まれ。4歳で体操を始め、小4の時に羽衣体操クラブ入り。昨年の全日本ジュニア個人総合で優勝し、アジアジュニア個人総合2位。今年4月にヴォラーレ体操クラブに移籍し、全日本選手権3位、NHK杯優勝で日本代表入りした。家族は両親と姉。146センチ、36キロ。

 ◆体操アジア選手権 アジアの競技力向上のため96年に中国・長沙で第1回を開催。その後は03、06、08、12年に行われ、日本初開催となる今回が6回目。中国が圧倒的に強いが、中国不参加の08年カタール大会は日本が男女団体、個人総合などを制した。