シンクロ日本が来年のリオデジャネイロ五輪のメダルラインを死守した。シンクロナイズドスイミングのチーム・フリールーティン(FR)決勝で予選3位の日本(乾、三井、中村、箱山、吉田、中牧、丸茂、林)は93・9000点でロシア、中国に続く銅メダルを獲得した。今大会はデュエット、チーム・テクニカルルーティン(TR)で銅メダルも、前日7月30日のデュエット・FRではライバルのウクライナ組に逆転を許して4位に終わっただけに貴重なメダルとなった。

 日本の選手たちは「シンクロはケンカ」との井村雅代ヘッドコーチ(HC、64)の言葉を胸に決勝に臨んだ。デュエット・FRと同様、ウクライナに逆転を許せば、来年の五輪でのメダルの確率はライバルと横一線になる。「絶対にメダルを勝ち取る」との強い思いで攻めの演技を展開した。

 五輪種目としては今大会最後の種目は危機的状況で迎えた。デュエット・TRで乾、三井組が8年ぶりの銅メダルを獲得すると、チーム・TRでも銅メダルを奪取。デュエット、チーム・FRの予選でも3位。ウクライナを抜き世界3番手の序列を確かなものにしつつあった。だが、7月30日のデュエット・FR決勝で落とし穴が待っていた。

 乾、三井組は、予選より軽やかで勢いのある演技を披露。同調性も優れていたように見えたが、ウクライナに逆転された。大きなミスもなく、はっきりした敗因も分からない中での4位転落。井村HCは「ウクライナと比べて何が負けているか。テクニック、同調性が負けているとは思わない」と不満を漏らした。チームにも動揺が走った。

 危機を救ったのは「ゆるキャラのきわめつけ」(井村HC)から戦うアスリートに進化を遂げた選手たちだった。「ウクライナには本気で逆転しようとの気迫があった。わたしたちはもっと勢いをつけ、絶対勝つとの気持ちをみんなで持ちたい」と乾。3位が「指定席」になりつつある中で、どこかに守る意識が出ていた。この日は大会当初の攻めの気持ちを取り戻す。わき出る気迫は、ジャッジにも伝わった。

 五輪種目の4つのうち、3つでメダルを確保。ライバルのウクライナにしっかりと差をつけたことは間違いない。「このままへこむか、立て直すか。(危機を)乗り越えたら日本チームは強くたくましくなる」。日本と中国で計14個の五輪メダルを獲得した井村HCには、リオのメダルがしっかりと見えている。【田口潤】