日本が逆境に打ち勝ち、3大会ぶりの五輪出場を決めた。優勝チームに与えられる16年リオデジャネイロ五輪出場1枠をかけ、地元の中国と決勝で対決。主将の吉田亜沙美(27=JX-ENEOS)を中心に序盤から持ち味のスピードを生かし、85-50で圧勝した。43年ぶりの優勝を飾った13年大会に続く2連覇で、団体球技の日本勢では最初のリオ切符となった。昨年11月に国内男子リーグの統合問題などで国際連盟から一時、国際試合の出場停止処分を受けた。8月の正式解除まで強化計画に大きな制約を受けたが、最高の結果を残した。

 試合でのプレーさながらに、勢いよく吉田が走ってきた。大きな黄金の優勝カップを手に、表彰台に並んだ11人の仲間の前に走り出た。かけ声とともに右手を突き上げる。「ただ、うれしいというだけ。みんなに夢をかなえさせてもらって幸せ」。「NO・1」と描かれたおそろいのTシャツを着て金メダルを首から下げた選手も、主将に呼応して思い思いに拳を突き上げた。

 「今日はぶっ倒れてもいい。大好きなバスケットを全力で頑張ろう」。試合前の吉田のゲキに開始から全開だった。190センチ台の大型選手をそろえた中国にスピードで対抗。高さを恐れずにゴール下に切り込んでいく。23歳の本川はドライブに加え、3点シュートも爆発。WNBAで活躍する192センチの渡嘉敷もゴール下だけでなく、外角シュートも高精度で決めた。

 「抗日戦争勝利70年式典」が北京で行われた3日は、チームは完全外出禁止だった。決勝の会場も完全アウェーだったが、勢いは衰えない。前半を44-22のダブルスコアで折り返しても、足は止まらない。中国はいら立ちファウルする場面も。主導権を握り続け、内海監督は「想定していたものが120%出た。理想的」と選手をたたえた。

 無情の措置が決まったのは昨年11月。国内男子リーグの問題に絡み、国際試合が禁止された。13年9月に43年ぶりのアジア選手権優勝を飾った後の通告だった。勢いをそがれ、今大会の出場すら危ぶまれるなか、一部解除は6月。ホッとするような場面で、吉田は若手に「若さを言い訳にしてほしくない。中途半端な気持ちでなく、強い気持ちを持ってほしい」と伝えた。

 自身は14年2月に左足前十字靱帯(じんたい)断裂の重傷を負った。一時は引退も考えた。いまも万全ではない中で、練習から全力で走った。コート脇でケアを受けながら声を出す姿に、仲間の士気も上がった。8月に正式解除されても「悪いプレーには厳しく言った」と妥協は許さず、選手の誕生日会などでは全員で盛り上がる。この日、最多24得点を挙げた本川の両腕にあった「スマイル」の文字は吉田が描いたもの。一体感の象徴だった。

 どの国にもなかった制裁という困難を乗り越え、チームは一致団結した。アジアに君臨し続けた中国を大差で下し、来年のブラジルへの展望も明るい。頼もしい主将は「上位を狙える」と言い切った。

 ◆隼(ハヤブサ)ジャパン 日本バスケットボール協会が11年に男女日本代表の愛称を公募した。341通の中から「ハヤブサ・ジャパン」に決まった。俊敏なハヤブサのようにコートを縦横無尽に切り裂き、勝利をもたらすことを願って採用された。

 ◆リオデジャネイロ五輪の女子バスケットボール出場枠 12チームが参加。開催国枠でブラジル、14年世界選手権優勝で米国が決定。各大陸の予選(兼選手権)優勝枠では、アジアから日本、北米からカナダ、欧州からセルビア、オセアニアからオーストラリア、アフリカは今後決定する。残る5枠は来年行われる世界最終予選で決まる。