女子63キロ級の川井梨紗子(20=至学館大)が、夢の五輪出場を決めた。1回戦で前年優勝のユリア・トカチ(25=ウクライナ)を破り決勝に進出。メダル確定でリオデジャネイロ五輪代表に内定した。元日本代表選手の母初江さん(45)も目指した悲願を達成。決勝では敗れて銀メダルに終わったものの、伊調馨(31)との対戦を避けて2階級上げて挑んだ五輪への執念が実った。

 わずか45秒、川井の五輪への思いが、準決勝で爆発した。ストーン(カナダ)を攻め立て、横から崩してえび固め。フォールを奪うと跳び上がって喜び、スタンドの初江さんに向けてガッツポーズを繰り返した。「たくさん迷って、たくさん悩んで決めた。本当にうれしい」。決勝を控えていても、涙はあふれた。

 昨年までは想像もしていなかった。58キロ級では、伊調に連戦連敗だった。しかし、国内外でほとんどテクニカルフォールの伊調に6分間試合をさせられるのは国内外で自分だけ。何より対戦が楽しかった。伊調を超えて五輪、という夢もあった。それでも、五輪への思いは強かった。48キロ級代表で大学の主将でもある登坂に言われた「63キロ級なら出られるよ」の一言。打倒伊調を休み、未知の階級で五輪を目指す道を選んだ。

 初江さん(旧姓小滝)も、かつては五輪を目指していた。89年世界選手権53キロ級で7位。「女子レスリングが92年から五輪に採用されるといわれて頑張っていた。でも、採用されなかった(採用は04年から)こともあってやめたんです」と話し「でも、娘を見ていて私ももっとやれば良かったと思った」と笑った。

 リオ五輪後は本来の58キロ級で再び伊調に挑戦するつもり。だから、体重も増やさずに計量時も61キロしかなかった。決勝では力負けでフォールされたが「体重を増やすつもりはない」と話す。しかし、目標は他の至学館大勢と同じ金メダル。「体重を増やさず、スピードを上げて強化したい。今日は五輪を決めて少し安心したけれど、本番では優勝を目指す」。川井は応援に駆けつけてくれた母の夢も背負って、リオに挑む。