「鉄人」ロックの大野均(東芝)がサモア戦に先発し、37歳150日の日本代表最年長出場記録を更新した。体を張った献身的なプレーで、前半終了間際のWTB山田章仁のトライを陰で支えた。キャップ数も最多の96に更新。過去2大会で1勝の難しさを味わった男が「三度目の正直」とばかりに、大躍進するチームの縁の下の力持ちとなっている。

 大野は前半終了間際、山田のトライにつながる連続攻撃が始まる前に、左足を痛めた。プレーが続く。駆け寄るメディカルスタッフを「大丈夫」とばかりに左腕で制した。サモアの巨漢から味方ボールを守らねば-。その一心で左足を引きずりボールを追う。トライまでに、5度も密集に体をなげうった。ハーフタイム、笑顔で自陣に戻る足取りは、わずかにぎこちなかった。

 左足の影響で前半だけで交代となった。6月の宮崎合宿では右手人さし指を骨折し、骨がくっついていない状態で練習を続けた鉄人。今回で3度目の大舞台に「W杯まできたら、1分でも長くグラウンドに立っていたい」と走り続けた。試合後は「そこまで重傷ではないので」と、いつもの穏やかな表情で話した。

 「ある意味、南アフリカ戦の前より緊張した」。失うものがなかった南ア戦と違い、負けられない試合で真価が問われた。南ア戦の勝利が偶然ではなかったと証明する必要もあった。大野は「やられるとしたらブレークダウン(ボール争奪戦)だった。そこをしっかり制した」と言い「W杯で普通に勝てるんだ、という感慨が深い」と胸を張った。

 大野は今大会出場した2試合でともに勝利。日本歴代最多のキャップ数はついに大台の100が見えた。優しい笑顔で「95、96キャップ目と、最高の思い出。まだまだ決勝トーナメントにいける。この1週間はその立場を楽しみたい」。8強は、まだあきらめていない。